AI時代の生存戦略|「仕事」を探す人から、「価値」をつくる人へ
──必要だったのは、スキルアップではなく「価値を発揮する場所」を変えることだった。
AIの台頭によって、多くの人は「どんな仕事なら残るのか」を探しています。
私もずっと、「ライターとしてどう生き残るか」「このままフリーランスを続けていて、5年後も食べていけるのだろうか」と考えていました。
でも、それ自体が間違った問いだったのです。
問題はライターという仕事ではありません。
ライターという土俵の中で、生き残る方法ばかり探していたことでした。
スキルを磨けばいいのか。
専門性を高めればいいのか。
新しいジャンルへ挑戦すればいいのか。
でも、その答えを探している限り、不安は消えない。
AI時代は、同じ土俵で勝ち続けるゲームではありません。
自分がすでに持っている価値を、発揮できる場所へ移るゲームなのです。
半年間、コンサルタントのおおのぎむつこさんとの対話を重ねる中で、私はそのことに気づきました。
AIと戦う方法を探すのではなく、自分が価値を発揮できる場所を見つけること。
「何ができるか」ではなく、「誰に、どんな価値を届けられるのか」という視点に立つこと。
それが、これからのフリーランスに必要な考え方でした。
今回は、おおのぎむつこさんとの対談を通して、
・なぜライターの仕事が減っているのか
・AI時代に本当に見直すべきことは何か
・これからのフリーランスは、どこで価値を発揮していけばいいのか
を、一緒に考えていきます。
この記事の最後には、考え方だけで終わらせないために、4つのワークシートも用意しました。
自分の経験を棚卸しし、「スキル」ではなく「価値」として見つめ直すためのワークです。
読み終えたときには、AI時代を生き抜くための新しい視点と、自分が進むべき方向が見えてくるはずです。
フリーランスという働き方の、その先へ
有花: 今日は、よろしくお願いします。
むつこ: 今、AIがこれだけ進化している世の中で、将来に不安を感じているフリーランスの方も多いと思います。今日は、そんなみなさんに、そのスキルや才能、もったいない!ちょっと視点を変えるだけで、新しい道がひらけていくよ、というお話をしたいと思います。
有花: AIが台頭してきて個人でできることが増えている今こそ、フリーランスって、本当は夢のある生き方のはずなんです。会社の中では制限があってできないことも、自分のスキルや得意なことを使って実現していける。
それが今、AIによって仕事がなくなるという形で、追い込まれているように見えますね。
むつこ: でも、ちょっと考え方を変えれば、今はすごいチャンスなんじゃないかと私は思うんです。
有花: ただ、ライティングの仕事自体はすごく減っていると思いますし、「このまま5年後も仕事をやっていけるんだろうか」と、クリエイター関連の人たちはすごく不安だと思います。
じわじわと崩れていった、文字単価|市場で起きていること
むつこ: 実際に、ライター仲間でそういう話をしたりするんですか?そういう声まで聞こえてくるものなんですか。
有花: はい、ライターの友人が、とても単価の良い仕事を定期的にやっていて、自分で受けきれない分を私にも声をかけてくれていたりしたんですけど、その仕事自体がなくなったと言っていました。新しく仕事を探そうとしても、もう単価が話にならないんです。
むつこ: 単純に件数が減っているだけじゃなくて、高単価の案件自体も減ってきている、という感じですか?
有花: 以前はクラウドソーシングにも1文字2円、3円という案件もたくさんありました。でも今はそんな単価の仕事はまずなくて、1円を超えていればまだいいほうです。ひどいと0.5円くらい。1記事2000文字以上書いて5000円だったのが、今は500円とか。仮にその仕事を取ったところで、暮らしていけないじゃないかと、案件を見るだけで絶望する気がします。
むつこ: なるほど。
有花: しかも、単価のいい案件には当然応募者も多くて。それと、スクールへ誘導するような、詐欺まがいの案件もすごく増えています。
むつこ: どういうスクールなんですか?もっとライティングの技術を磨きましょう、スキルアップしましょうみたいな?
有花: そうですね。「AI使って初心者でも書ける」「書きながらスキルが身につく」みたいな案件も多いんですけど、応募してやり取りしているうちに、スクールへの誘導に変わっていく。せっかく時間をかけて応募用の記事を書いたのに、採用されない。
むつこ: そういうのは結局、リスト集めなんですよね。不安を抱えているライターのリストを集めて、後からそのスクールに誘導する。困っている人に、「じゃあこれどうですか?」って提案して、勧めるのが商売の基本だから。でも、それが悪いという話をしたいのではなくて、そういう構造があるって知っておくことが大事なんです。
知らないでいると、うっかり変なものに引っかかってしまう。だからこそ、俯瞰して、正しい知識を身につける。 小手先のやり方を探すのではなく、「なぜこの人たちはこんなことをするんだろう」という構造を知っておくことが、何よりも大事なんです。
有花: なるほど。募集はたくさんするけど、結局発注しない業者ってそういうことだったんですね。なんでこんなにたくさん募集しているのに、仕事を発注しないんだろうなって疑問だったんです。
確実に変わった、ゲームのルール
有花: むつこさんと話をしていていなかったら、そんな構造もわからなかったと思います。ずっと「プロフィールが悪いのかな」とか、小手先のスキルにこだわっていたと思うんです。そこが自分に足りないんだ、という考え方でしか物事を見られていなくて。
むつこ: いえ、決してそれは悪いことじゃないんですよ。今まではそれで良かったんです。 長く仕事を続けていくため、案件を獲得するためには、それがベストな対応だった。
ただ、AIがこれだけ発展してきて、世の中が変わっている。ゲームチェンジが起きている。そのことに気づくかどうか、なんです。今までの有花さんが間違っていた、という話じゃないんですよ。
有花: 今まではそのやり方でやってきて、それで良かったんですね。その点は安心しました。
むつこ: いい意味で、最適化してきたんですよ、有花さんは。そのお仕事に最適化してきたからこそ、10年、ライターというお仕事でちゃんと稼げていた。だけど今、ここでゲームチェンジが起きているんです。
有花: そこに気づけるかどうか、ということですよね。
むつこ: 確実に、もう変わっているんですよ。私自身、個人事業主として14年やってきて、大きくゲームチェンジしたタイミングが何度かあったと感じています。
一番初めは、スマホが当たり前になったとき。私が起業した最初の頃は、パソコンから見る人がほとんどでした。でも一気にスマホが広がった。スマホの利用率が増えたのは2013年くらいだから、実は、ほんの10年ちょっとの歴史しかないんですよ。
有花: ずっと昔からスマホがあったような気がしてしまいます。
むつこ: そう。でも、もうずっと昔からあったような気がするでしょう?そんなに昔じゃないのに、すっかり変わっちゃってるじゃないですか。アメブロのカスタマイズとか、10万円とか結構いい値段で売られてましたね。あれはパソコンで見る人がほとんどだったから売れてた。でも、スマホになったら意味がなくなってしまいましたよね。
有花: 確かにありましたね、そんなのも。スマホの登場でなくなった仕事の一つですね。
むつこ: その次がコロナです。コロナでZoomが当たり前になった。それまでは、飛行機や新幹線でセッションを受けに来てくれる人もいました。東京までセミナーに行ってきましたとか、それがある意味、ちょっとしたステータスでもあったんですよね。でもZoomの普及で、一気にオンラインで受けるのが当たり前になった。
有花: セッションのスタイル自体が、ガラッと変わったんですね。
むつこ: 日本全国だけでなく、世界中どこからでもリアルタイムで受けられる。そういう時代になったんです。 まるで変わってしまった。でも、何より一番大きかったのは、お客さんがオンラインへの抵抗感をなくしたことなんです。
今、コンテンツビジネスが稼げるといわれているのも、その土壌ができたからですよね。
たった10年の間に、スマホの普及や、コロナ禍によってオンラインが当たり前になる、という大きな変化がありました。
でも私の感覚では、AIがこれだけ発達したというのは、その二つよりもはるかに大きいゲームチェンジだと思っています。実は私、元システムエンジニアなんです。20代の頃、ちょうど最初のAIブームで、AIエンジニアを夢見て、研究開発している会社に転職したんです。でも結局、おのれの才能の無さを悟って挫折したんですけどね。
有花: そうなんですか。
むつこ: だから、まさか自分が生きているうちに、AIと自然に会話できる日が来るなんて思ってもいませんでした。それが今、普通に会話できて、話したことを文章に起こしてくれる。
これはもう絶対、スマホやオンライン化よりも、ずっと大きなゲームチェンジだと思います。
世の中が全く変わってしまう、そういう時代に私たちは生きているということなんですよ。
有花: たしかにこの1年だけでも、本当にすごい進化です。最初はChatGPTくらいしかなかったのに、今はどれがどれだかわからないくらい、AIが増えてきていますよね。
むつこ: 本当に、SFの世界を生きている。この先、マトリックスやターミネーターのような世界も、夢物語じゃなくなってきている。そういう時代に、私たちは今直面しているんだということを、一回考えたほうがいいと思うんです。
しかも、AIは加速度的に進化していく。ひと月単位どころか、一週間、数日、一日単位でどんどんバージョンアップしていく。でも人間って、意外になじむのが早いんですよ。さっきのスマホの話もそうですけど、たかだか10年前には無かったんです。でもそう言われても、「え?」って思うでしょ。生まれたときからスマホを触っていたような気になっている。
AIも同じです。みんなもう「チャッピー」なんて呼んで、普通に相談してるじゃないですか。それくらいあっという間に慣れてしまう。
そんなふうに、今、時代はまったく変わっているんです。だからこそ、そこから物事を眺めた方がいいんじゃないか。
ライターの案件が減っているというのも、そもそもどういう構造で起きているのか。 そこを見ましょう、ということなんです。
ですから、今日のこの対談で一番伝えたいのは、「こうすれば生き残れるよ」という目先のノウハウではなく、もっと俯瞰して全体を眺める視点を持ったらどうなるでしょう、ということなんです。そういう視点で世の中を眺めてみたら、一体どうなるでしょう。
AIと戦うのではなく、自分が勝てる場所を探す
むつこ: どうですか、有花さん。今、AIで仕事が減っているという、その真っ只中にいて。
有花: 私、AIの進化を、去年まではまだいけると思っていたんです。AIは所詮AIで、絶対人の書いた文章のほうが上だし、10年もやってきたんだから負けないと思っていました。
だけどこの1年の進化はものすごくて。音声入力アプリを使っているんですけど、適当に喋ったことが、句読点までついて文章になって出てくるんです。それを目の当たりにした時、頭が真っ白になりました。
例えば、添削するとか、書き慣れていない人の文章を見て直すとか、そういうことは、まだまだできると思っていたんです。でも、AIの添削のほうが上だったら、本当に私は何をしたらいいんだろうって。10年もやってきたのに、それを軽々とAIに超えられてしまって。
じゃあ、私はこれを使ってどうやってAIに勝てばいいんだろうって、勝負する方法ばかり考えてしまいました。
むつこ: そこで変えるべきは、やり方じゃない。考え方を変えることです。
AIと戦おうとしても無駄じゃないですか。AIと戦って、自分が勝てる場所はどこなのか、ということなんですよ。
これ、大昔から変わらない。孫子の兵法です。勝つ方法を考えるより、いかに負けないかを考える。負ける場所では、そもそも戦わない。
AIの方が絶対に強い場所で戦ってもしょうがない。じゃあ、自分が勝てる場所はどこなのか。その場所を探す、という視点なんですよ。
有花: その視点が、本当に全くありませんでした。そこに思い至らなかったので、最初はもう、どうしたらいいか、そのノウハウややり方を必死で探しました。
むつこ: AIに聞けば、やり方は教えてくれるじゃないですか。
戦略だって考えてくれるし、壁打ち相手にもなってくれる。私みたいなコーチ・コンサル業だって、うかうかしていられないわけです。
でもね、AIって結局、自分の鏡なんですよ。自分の写し。だから自分の知識や気づきの範囲を超えてこない。
なぜかというと、生成AIって、確率論で「この言葉の次はこう言ったほうがいい」という最適解を出してくる。だから、忖度しちゃう。基本、否定しない。何を言っても「素晴らしい視点ですね」って返ってくる。
最近はうちのAIも「むつこさん、そこ穴がありますよ」なんて言うようになってきたけど、それも私の思考パターンをずっと読んできた蓄積があるからです。
結局、自分の想定の範囲を超えないんです。
たとえば有花さんが、「どうやったら案件を獲得できるでしょうか」とAIに聞けば、「ポートフォリオを充実させましょう」とか「応募文を変えましょう」って返ってくる。こっちが「どうしたらいい?」と聞くから、それへの最適解を返してくるだけ。こちらの質問の範囲を超えないんです。
でも人間っていうのは、相手よりも高い視座を持っていれば、違う問いを立てられるじゃないですか。
有花: それがコンサルタントとか、他の人に聞く意味ですね。自分にない視点をもらえる。
むつこ: 自分の意識にないことは、質問できないんですよ。だから自分より視座の高い人と対話することが必要になる。
有花: もうAIに勝てない。自分の仕事に意味はあるのだろうか、とさえ思いました。
むつこ: 実力のある人ほど、絶望してしまうんだと思います。スキルの高い人ほど、その奥深さがわかっているから、「この調子で行ったら、AIって、どこまで行くんだろう」というのを肌で感じてしまう。
初心者だと、案件の単価が安くなっている、ぐらいの認知で終わってしまうけれど、今までやってきたベテランの人、実力のある人は「このままでいったら、私の存在意義ってどこにあるんだろう」というところまで考えてしまうんですよ。
有花: 本当にそうでした。だから、ライターじゃなくてディレクター、例えばキーワード選定をするとか、検索の潜在ニーズを探すための調査だとか、そういう方向に行かなければ、と。
むつこ: またそこで、やり方を追求する方向に行ってしまう。よく見かける生き残り戦法ですよね。「ライターだとAIに代わられるから、ディレクターになりましょう」みたいな。
でもこれって結局、今までのゲームの延長で、生き残れる方法は何かを考えているわけです。 そしておそらくそのディレクションも、AIができるようになる日は近いと思います。
有花: もうなってます。「こういう方向性で、こういうことを言いたい」と指示すれば、もう見出しまでつけて記事にしてくれるんです。そうなると、「あ、編集もいらないじゃん」と思ってしまって。編集者として生き残る道もないのかって、また絶望しました。
むつこ: 結局、今までと同じゲームの延長で、文字通り「生き残ろう」としているんですよね。でも、それはいたちごっこで。ノウハウが分かっているところ、道がわかっているところは、AIは凄まじい勢いで模倣してきます。
有花: だから今、私はAIがまだたどり着いていない抜け道を探そうとして、AIに追いつかれたらまた違う脇道を探す、といういたちごっこをしていたんだと思います。その道の延長線上にいる限り、脇道にそれたところで、きっとAIに追いつかれるんですよね。
むつこ: そう思います。自分の努力が足りないとか、才能やスキルの話じゃなくて、ゲームが変わっているということなんです。 今日これ、何度も言いますけど。
じゃあ、これから先の新しいゲーム。どういうふうにそのゲームを楽しんでいくのか?
そこですよね、みなさんが知りたいのは。
有花: 私がやっていたことは、いかに早く走り抜けるか、あるいは脇道を見つけるか、という「やり方」を考えることでした。
しかし、ゲーム自体、つまり道筋自体が変わってしまったのだから、その道から一旦抜け出さないと、新たな自分には会えないんですよね。
では、一体どうしたらいいんでしょうか?
スキルを活かすために、違うステージへ
むつこ: ここでですね、同じ道を走っているということは、ある意味、同じ次元にいるということなんですよね。同じ事象の中にいる。だから、そこからポーンと出るくらいのことをしないとダメなんじゃないの?、と私は思うんですよ。
どう説明したらわかりやすいのかな。
有花: ゲームのステージみたいなものでしょうか。いつまでも「この武器が足りないからボスが倒せないんだ」という感じで、同じボスと戦い続けているから、いつまでも倒せない。
戦い方を変えるだけでは、いつまでもそのボスと、つまりAIと向かい合い続けることになる。
むつこ: そうですね。まさに、AIと戦おうとしていましたよね。その「AIと戦う」という考え方自体を変える。AIと共存するというよりも、AIを使う側になる。どちらに主導権があるか、という話なんです。
さっきのゲームの話でいえば、ステージが上がる時って、世界が変わるじゃないですか。普通の村にいたかと思ったら、洞窟に行ったり、氷の世界に行ったり、宇宙に行ったり。世界そのものが変わると、そこで働くルールが変わる。
何が強いかも変わりますよね。ロールプレイングゲームってパーティーを組んで、「ここではこのキャラが強い」というのがある。
じゃあ、今まで持っていたスキルが使えないのかって、そういう話をしたいわけじゃないんです。使い方を変えましょう、使う場所を変えましょう。あなたのスキルをもっと活かせる場所があるんじゃないですか、ということなんです。
今回、このセミナーを私が企画したのは、10年以上、ひとり起業の業界とか世の中の動きを見てきて思うのが、「真っ当な人が真っ当に稼げる世界であってほしい」ということなんです。 ちゃんと価値に見合った対価を受け取れる、そういう世界であってほしい。
あなたのスキルは、ライターという世界の中にいたら、どんどん価値が低くなっていくかもしれない。でも、もっと高い価値がある。そういう世界が、あるんじゃないのって思うんですよ。
これだけSNSが発達していると、「タコツボ化」というか「エコーチェンバー現象」といいますけれども、自分の興味のあることしか自分のタイムラインに流れてこなくなる。
だからインプットの量だけは大量にあるけれど、その内容は均一化されてしまい、違う視点の情報が入ってこなくなってしまっている。
だから、ライターとして戦おうとしちゃってたわけじゃないですか?
有花: まさにそうですね。これまでのライターの域から、出ることができませんでした。
むつこ: ライター以外の世界もあるのに、そこが見えなくなっちゃってる。
それがすごくもったいないなっていうのを、外から見ていてずっと思っていたんです。
1,000円のイラストが教えてくれたこと
むつこ: 例えばですね、私がnoteのアイコンに使っているイラスト、あれはココナラで頼んだんです。いくらで作ってもらったと思います?
有花: 5,000円くらいですか?
むつこ: あれを作ってもらったのは2022年で、その時は2,500円でした。今も現役で使っています。で、その時、結構驚いたんです。「え?この値段でいいの?」って。
その後、2024年に、動画用のスライドに入れるために、同じ人に違うポーズを頼んだんです。それ、いくらだと思います?
有花: お値段、据え置きですか?
むつこ: ワンポーズ1,000円です。で、「ええ?!」って驚いた。
有花: 安すぎます。
むつこ: だって「こういうことをお願いしたいんですけど」というやり取りがあって、納期を決めて、微調整までしてくれて、それで1,000円ですよ。なんか申し訳ない気がして、おひねり足しましたもん。
有花: なんと、おひねりまで!それはなぜですか?
むつこ: だって申し訳ないなと思って。時給にしたらいくらになるんだ、って話ですよね。それに、私はこのイラストを使うことで、この先、自分のセミナーをいくらで売るのかってことです。私のセミナーの価値が上がるんです。それを1,000円で買っちゃっていいの?って、すごく思いました。
有花: 1,000円はびっくりです。
むつこ: なぜそういうことが起きるかというと、これも同じことなんです。ココナラという狭い枠の中にいると、だいたいの相場感ができてしまう。その中での選択になるから、1人だけ高い値段はつけにくい。SNSのアイコンが欲しいという一般のお客さんが多い場所だから、1,000円、2,000円が出せる金額になってしまう。
でも私みたいに、すでにビジネスをしている人間からしたら、「1,000円で頼んじゃっていいの?」って思うわけです。
有花: そうか……そのお話で分かりましたが、私はまさにお客さんを見ていなかったですね。
むつこ: でもこれは、単純に「もっとたくさんお金を出してくれるいいお客さんを捕まえましょう」ということを言いたいわけじゃないんです。もっと、「そもそも」を考えてほしいんです。
そもそも仕事の価値とは何なのか?
むつこ: そもそも、仕事って何だっけ?フリーランスで働いていくって、どういうことだっけ?
早い話、商売じゃないですか。「商い」ですよね。
じゃあ、「商い」の基本って何だろう。
商売というのは、提供する価値に対して、お金をいただくことですよね?
じゃあ、価値とは何なのか。
この問いを立てて欲しいんです。
そもそも、仕事ってなんだっけ?じゃあ、価値ってなんだっけ?
ここまでレイヤーを上げて考える。
これが出来るか、出来ないか。
この視点の変化。
この視点を持っていれば、どんなゲームに変わろうと、原理原則は変わらない。
商いって、それこそ太古の昔、物々交換の時代からあるわけじゃないですか。
同じ水でも、一番高く売れるのは砂漠ですよね。
欲しがっている人がいる、というだけで、価値は決まる。
ダイヤモンドだって、綺麗だから高いというより、希少だから高いんですよね。少ないから、どんどん値が上がる。
原油も同じで、今の情勢だと少ないから値が上がっている。
だから、価値というのは相対的なものなんですよ。絶対的なものじゃなくて。
有花: 私はその「価値」という概念を、ライターという仕事の中だけで捉えていて、捉え方が間違っていました。お客さんにとっての価値は何か、もっと広く見なきゃいけないのに、単に「分かりやすい文章」とか、目先の価値ばかり追求していたので。
ココナラで出品もしているんですが、単価を上げていくと、当然お客さんが減るんです。でも安い値段ではやっていけない。そこで悩む。結局、その土俵の中で戦おうとしていたんですよね。
むつこ: そのゲームを戦おうとしていたから、値段を上げていくと売れなくなる。だってそのゲームは、そういうルールになっているんだから。
でも、さっき言ったように、私は、「1,000円で買ったら申し訳ない」って、自分が悪いことをしているような気持ちになっちゃった。だからおひねりを追加した。そういう人もいるわけです。
で、じゃあ、なぜそう思うのか?
それは、このアイコン1個がどれだけの価値を生み出すかを分かっているから。
これに変えることで、この先自分がどれだけの価値を生み出せるのか。価値イコール売上と言ってもいいですけど、それが分かっている人は、1,000円でも1万円でも出すんですよ。これが価値なんです。
ライターさんの例でいうと、文字単価いくらで売っていると、内容って関係なくなってしまいませんか。「1文字いくら」を売っていると思っていたら、それは早い話、自分の労働力の切り売りなんですよね。
何を売り買いしているのか。「1文字いくら」を売り買いしている。それって早い話、自分の労働力の切り売り、スキルの切り売りなんです。
そうじゃなくて、価値を売るという考え方に変える。
有花: ずっとその土俵で戦っていたから、「私の記事は1文字3円だけど伝わりますよ」「分かりやすいですよ」っていう伝え方しかできていなくて。「私に書かせたら、あなたのビジネスにどんな価値をもたらすのか」というところを分かってもらう、ということに目が向いていなかったんです。だから単に単価で勝負しようとしていた。
価値を提供し、客を選ぶ勇気
むつこ: そうですね。さっきも言ったように、商売って価値の提供です。だから、「私はどんな価値を提供できるか」「この価値を一番高く買ってくれる人は誰だろう」って考えたほうがいい。
今日、本当に伝えたいのは、「フリーランスじゃなくて起業したほうがいいよ」みたいな単純な二者択一の話じゃないんです。そうではなくて、
「あなたの価値が一番高く売れるのはどこでしょう?」
この視点です。
ある程度、仕事を続けてきた方なら実感があると思うんですが、ちゃんとお金を払ってくれる人のほうが、実は「いいお客さん」なんですよ。安い金額のほうが、変なクレーマーが発生しやすい。
有花: 本当にそうです。
むつこ:私自身、最初はセラピストとして起業したんですが、自分で言うのもなんですけど、その業界の中では高めの料金設定だったと思うんです。
で、当時、来てくださったお客さまには、必ず聞くようにしていたんです。「どうして私を選んでくれたんですか? 同じようなことをやっている人は、星の数ほどいるのに」って。
するとある時、こう言われたんです。
「安すぎると怪しいから」
有花: ああ……確かに。
むつこ: 「自分の人生をどうにかしたいと思っているのに、数千円とかだと怖いじゃないですか。これだけの金額をつけているということは、それなりの自信がなければできないはず。そう思って選びました。」
こう言われて、私もハッとしました。
漠然と感じていたことが、その方の一言で、「ああ、やっぱりそういうことなんだ」って、すごく腑に落ちたんです。
有花: 自信があるから、ちゃんとした価格をつけられるということと、自分の価値を見出すというのが、すごく密接に関係しているんですね。
今のその小手先のやり方やスキルにこだわっているうちは、自分で価値を生み出しているという感覚がない。だから自信が持てなくて、「1文字1円でやります」というような仕事の仕方になってしまうんですね。
むつこ: そこなんです。「何を売っているか」なんですよ。「1文字いくら」というのは、労働者の考え方です。労働者は労働力を売る。起業家は価値を売る。
有花: 「自分が作る文章で、誰にどんな価値をもたらすのか」という根本的なところを考え始めたら、「これだけの価値を与えられるんだ」と思えて、価格にも自信が持てるようになるんだと思います。
そこをしっかり考えていかないと、いつまでも「他の人も1文字1円だし」という、価格競争から抜け出せないライターになってしまいますよね。
価値とは高低差である
むつこ: でね。ここで、心優しい人ほど「いや、でも私、そんな価値なんて提供できないし」って思っちゃうんですよね。
でもね、これ、私が起業したばかりの頃の話なんですが、すごく印象に残っていることがあって。
ある日、待ち合わせのカフェにやってきた友人が「むつこさん、ちょっと聞いてくださいよ!」って、席に着くなりオーダーもそっちのけで、「この前、神田昌典さんのセミナーに行ってきたんだけど」って話し始めたんです。
神田昌典さんと言えば、マーケティングの神様というか、この業界を最初に作った人みたいな存在で。その神田さんが、当時占星術の本とか出し始めてたんですよね。
有花: ああ、そうですね。私も知っています。本も読みましたよ。
むつこ: で、その友人が言うには、セミナーに行ったら、来ているのはやっぱりおじさんばかりだったと。
そして、そのおじさんたちが、女子だったら絶対知っているようなことを、「すごくいいこと聞いた!」って、一生懸命ノートを取っている。
彼女、もうものすごい興奮して、「あんなの女子だったら、絶対に知ってることなのに!」って叫んでました。
つまりこれが、価値ということなんですよ。
自分にとっては当たり前でも、それを知らない人に教えてあげれば、価値になる。
だからそんなに難しいことじゃなくて、あなたの価値を一番高く買ってくれる人は誰なのか?
売る場所を変えれば、まったく変わってしまう。
価値って、そういうことです。
有花: ……あ、つまり、それが価値の捉え方ですね。
価値というと、自分がすごくなきゃいけないと捉えてしまう人が多いと思うんです。私もそうでした。「価値を与える」となると、「私はそんなにすごくないし」とか。すごい文章を書けるライターと比べると、自分はそんなに価値が高くないかも、と気後れしてしまう。
でも今の占星術の例みたいに、知っている人には当たり前でも、知らない人には価値があるということなんですよね。
むつこ: そう、価値は高低差なんです。自分がたくさん知っていることを、知らない人に与える。その高低差で価値が生まれるんです。
有花: それぞれのライターが知っていることって、今までやってきた仕事の中で必ず何かしら持っているもので。その価値が、絶対的じゃなくて相対的だった、ということですよね。 その人がすごいんじゃなくて、その人が知っていることが、知らない人の役に立てば、価値を与えたということになる。
むつこ: その通りです。ライターさんでも、Webライター、取材ライター、インタビューが得意なライターなど、いろいろありますよね。でも、多くの場合、それを記事の単価で売ってしまっている。1記事いくら、1文字いくらで。
たとえば、インタビュー記事って、今1件いくらくらいなんでしょう?
有花: 文字数や写真込みかどうかでも違いますが、数万円くらいだと思います。
むつこ: そうですよね。でもそれは「1記事納品しますよ」で売っているからなんです。
でも「御社の理念を伝えるために、インタビュー記事をホームページに載せませんか?そうすれば、もっと認知が広がりますよ」となったら、それこそ1件10万円とつけてもいいわけです。会社にとっては。
これ、どこからお金が出るのか、その視点を持ってるのかってことなんです。
同じ10万円でも、個人が自分のお財布から出す10万円と、企業が経費から出す10万円は、まったく違う。だからB to CなのかB to Bなのか。誰に、どこに向けて売るのかで、料金設定はぜんぜん変わってくるんです。
つまり何が言いたいかというと、自分のスキル、才能、経験値、特にベテランの人たちは持っているんです。それを
「どこで一番活かせるのか」、そこを考えてみてほしいんですよね。
ゲームプレイヤーではなく、ゲームマスターになる
有花: すごくその発想の転換が難しい部分だなと思います。6ヶ月、むつこさんと話してきたから、言っていることは分かるし、価値ってそういうことなんだなと、ようやく腑に落ちてきたんですけど。
例えば、ライターってそれぞれ得意なジャンルがあるんですよね。医療系とか金融系の記事だと、ちょっと単価がいいんです。難しいので。私も医療系とか書いていたんですけど。なんかやっぱり勘違いしがちなのはそこですね。
自分の価値イコール「難しい記事が書ける」という種類の話じゃないってことですよね。
むつこ: そうです。もう一段、視座を上げて。同じ問題を、一段上のレイヤーから構造で捉えていく。
同じ土俵で戦っていたら、今までと同じ戦い方なので、AIがすぐに追いつきます。特に難しいことは、AIは得意なんです。
有花: ですよね。論文とか、全部取り込めてしまうので。むしろ、戦う場所がなくなりますね。
むつこ: むしろ危険です。それは今までと同じゲームのルールの中にいる。そのゲームの外に出ましょう、という話をしているんです。
有花:「こういうジャンルが書けます」ということが価値の提供だと思っていました。
でも、それって脇道に逸れただけで、そのステージは変わっていないんですよね。そのステージも、やっていることも、結局は変わっていないんですね。
むつこ: そうです。同じゲームの中にいるから、いつまでたってもゲームマスターにはなれない。プレイヤーのまま。でも、もう一段高くその構造を見抜くことができれば、ゲームマスターになれるんですよね。 自分がゲームを作っていく側になれる。自分でルールを作れるようになる。
あまり対立構造では語りたくないんですが、分かりやすさのために言えば、フリーランスと、自分でビジネスを作って起業するというのは、大きな違いがあると思うんです。
確かにフリーランスは雇われてはいないけれど、やっぱり発注される側ですよね。相手が主導権を握っている。そこをひっくり返す。「自分が主導権を持つ、そういう生き方もあるんだよ」ということです。
これは、好き嫌いもあるし、どちらが正しい、正しくないという話ではなくて。今日皆さんに持ち帰ってほしいのは、「違うゲームもあるよ」ということを、まず知ってほしいんです。
そこじゃないゲームもあるし、そこでもっと楽しく生きていけるだけのスキルが、あなたにあるんじゃないですか?それを、考えてみてほしいなと思います。
有花: 私もあまり前は意識していなかった部分なんですけど、フリーランスも個人事業主も、私の中では同じカテゴリーだったんです。でも、このピンチに陥ったことで、「フリーランスというのは、その働き方のカテゴリーだったんだ」と気づいて。
むつこ: そうです、そうです。階層の違う話なんですよね。
有花: 単に雇用されていない、案件の都度契約を結ぶような、自由に働く働き方がフリーランス。個人事業主は、自分がビジネスの主体になっていく、というところ。そこを全然意識していなかったからこそ、価値の捉え方自体が、根本から違っていたんだと思います。ゲームが変わっているっていうところまで、全然気づきませんでした。
フリーランスは何を売るのか|棚卸しのその先へ
有花: ここへ来て、この10年、どうやって仕事をしてきたんだっけ?と原点に戻るというか。
SEO記事でも、読んでくれた人が「私もやってみよう」と思ってくれるような、行動を促すような記事を目指していたはずなんですけど、文章を書くこと自体の価値を置き去りにしちゃっていたかな、と思いました。
私と同じように、「この先どうしようか」「仕事がなくなるかも」と不安になっている人たちは、一度原点に戻って、自分が経験してきたことの棚卸しをやってみてはどうかなと思うんです。
そうすることで、自分が与えられる価値というのが何なのか、見つかるのではないでしょうか。
むつこ:そうですね。ただ、棚卸をするときにも、ひとつ気をつけて欲しいことがあります。
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