「営業対象じゃない」と思われた瞬間、人はここまで雑になる。
Xで呟いた内容から考えてみた。
営業マンの対応で、忘れられない経験がある。
最初は普通だった。
ところが、こちらの状況を聞いた営業マンが、
「この人は今すぐ契約しない」
と判断した瞬間から、明らかに対応が変わった。
質問への回答は短くなる。
説明は雑になる。
提案もなくなる。
最後は、
「うちでは無理ですね、他社を検討ください」
で終了。
おそらく営業マンからすれば、効率的な判断だったのだと思う。
でも、営業を経験してきた側からすると、これはかなり危険な営業だと思う。
なぜなら、
「今買わない人」と「価値のない人」は、まったく違うからだ。
データを見ると「対応の悪さ」は売上に直結する
これは単なる精神論ではない。
PwCの2025年Customer Experience Surveyでは、29%の消費者が、オンライン・店舗を問わず「悪い顧客体験」を理由にブランドの利用・購入をやめたと回答している。
さらに日本の調査でも興味深い数字がある。
モビルスの2025-2026年調査では、約66.8%が「窓口対応によって商品・サービスの購入や利用に影響したことがある」と回答。
そして、そのうち45.6%が「対応に不満があり、購入・利用をやめた」と回答している。
つまり、
「対応が悪かっただけ」では済まない。
その対応が、そのまま売上を失う可能性がある。
営業マンが見落としがちな「未来の顧客」
営業マンはどうしても、
「今月売れるか」
「今期の数字になるか」
で顧客を見る。
これは当然だ。
営業には目標がある。
だから、優先順位をつけること自体は悪くない。
問題は、
優先順位が低い=雑に扱っていい
になってしまうこと。
例えば、今日契約しなかった人が、
半年後には決裁者になっているかもしれない。
会社の予算が変わるかもしれない。
別の部署で導入を検討するかもしれない。
知人を紹介してくれるかもしれない。
営業マンが見ているのは、
「今日の顧客」
だけ。
でも会社にとって重要なのは、
「未来の顧客」まで含めた顧客資産だ。
「営業対象外」という言葉ほど危険なものはない
本当に優秀な営業マンは、
「この案件は今は追わない」
とは考えても、
「この人は営業対象外」
とは考えない。
なぜなら、人間関係は数値ほど単純ではないからだ。
今日の見込み度が10%でも、
半年後に80%になることがある。
逆に、
今日90%に見えた案件が、
競合に流れることもある。
だから営業に必要なのは、
見込み客を切り捨てる能力ではなく、見込み度を見極めながら関係を維持する能力だと思う。
57.1%が「営業担当者からしっかり話を聞けること」を重視
HubSpotの「日本の営業に関する意識・実態調査2025」では、商品・サービス購入時に重視することとして、「営業担当者からしっかりと話を聞けること」が57.1%で最多だった。
これは非常に重要だと思う。
営業マンの価値は、
「商品を説明すること」
だけではない。
顧客の話を聞き、
状況を理解し、
必要な情報を提供し、
「この人に相談してよかった」
と思わせること。
だからこそ、最初から「買わない」と決めつけて対応を変えてしまうのは、営業の本質と逆行している。
「売らない営業」も、営業の仕事
全員に売る必要はない。
むしろ、
「今は必要ありません」
「今回は見送ります」
という顧客を無理に追い続ける必要もない。
ただし、
断られた瞬間に関係を終わらせない。
ここが大切だ。
「また必要になったら、いつでもご相談ください」
その一言だけでも印象は違う。
営業は、
契約を取る仕事であると同時に、次の相談を残す仕事でもある。
一流の営業マンは「最後の5分」が違う
商談の最初は、誰でも丁寧にする。
問題は、
「この人は買わない」
と分かった後だ。
そこで態度が変わる人と、
最後まで変わらない人。
顧客が本当に覚えているのは、案外後者だ。
Bainは、顧客ロイヤルティを高める企業では、顧客が長く利用し、追加購入や紹介につながることを重視している。ロイヤルティの高い企業は、競合より成長率が高いという分析も示している。
つまり、
「今売れるか」だけを見る営業は、短期的には合理的でも、長期的には非合理的になり得る。
営業マンにこそ「人としての営業力」が必要
営業対象ではないと思った。
だから雑に対応した。
その瞬間、営業マンは1件の売上を失っただけではない。
その人の未来の売上。
紹介。
口コミ。
そして、
「この会社は感じが悪かった」
というブランドイメージまで失ったかもしれない。
営業は数字の仕事だ。
だからこそ、数字にならない部分を軽視してはいけない。
今日売れない人を、明日売れる人にする。
そして、
今日売れない人にも、「また相談したい」と思ってもらう。
それが、本当に強い営業マンなのだと思う。
