心、凪ぐ森~森林浴のススメ
概要
梅雨入り直前の週末、森林公園で開催された「森林浴」なるものに初めて参加した。

インストラクターである森林セラピスト、Hさんによると、森林浴というものは、科学的エビデンスに裏付けされたセラピーで、森の力を借りて、心身を癒やす。
具体的には、森の中で五感をフルに働かせる。森の緑、木々の香り、鳥の声、風の感触、また植物の出すフィトンチッド(樹の自己防衛物質)を浴びることにより、人が本来持っている心身の機能を取り戻す。ストレス軽減、血圧低下、睡眠改善、免疫力アップ、生活リズムの回復、自己肯定感の上昇などが見られると実証されている。
「五感を開放することが大切です。森とシンクロすることに集中しましょう。余計なおしゃべりやスマホは禁止です。考えるのではなく、感じましょう。」ブルース・リーのようなセリフをおっしゃるHさんに従い、私はスマホをしまった。(記事中の写真の大部分は終了後に撮影)
ゆったり体験するため、参加者は一桁の小人数。まずはアンケートに、今の体調や気分を記入する。終了時の状態と比較するらしい。それが終わると、公園入口を出発し、ゆっくりと森に向かって歩き出した。
スタート

あたり一面、紫陽花が満開だ。早速Hさんが立ち止まり、「紫陽花の葉っぱを触ってみてください」と指示。

その後も時折、Hさんの指示に従って、様々な樹々の葉や幹に触ってみた。つるつるしていたり、ざらざらしていたり。冷たかったり、温かかったり。

同時にHさんは木々の葉を何枚か取り、ぎゅっと二つ折りにして私たちに渡した。「どんな匂いがしますか。」あら、樹によって微妙に葉の香りが違いますね…


小川では水音に耳を澄まし、ひんやりと冷たい水面を何度も撫で、指を差し入れて流れを感じた。

森の入り口。「ではここで、樹々を見わたしながら、ゆったりと深呼吸をしましょう。」

4秒くらいかけて鼻からたっぷり息を吸い、香りも楽しむ。4秒くらい止めて体中に酸素とフィトンチッドを行きわたらせ、倍の時間をかけて、ゆっくり息を吐く。それを何度か、気のすむまで繰り返す。
落ち着いた。
こんにちは、樹々の皆さん。
ゆっくりと森の中に足を踏み入れた。
森の中

「落ち葉で覆われた地面を踏みしめる感触。頭上の樹々のそよぎ。両方を感じながら、ゆっくり歩きましょう。」

あいにくの曇りだけど、その分、たまに差し込む陽光が、神々しい。
「手のひらを太陽に向けて、温かみを感じてみましょう。」
森の奥の方に、ベンチがあった。けれど、そこには座らなかった。
「木の切り株や大きな石に座って、森を見上げてみましょう。葉の色は、何種類くらいありますか?」

「左耳を澄ませてみて。鳥が鳴いていますね。右耳を澄ませてみて。何が聞こえますか?両方の耳を使って、周りの音を脳内マップに描けますか。」

「足元を眺めてみましょう。何か動いているものはありますか?周りの樹々のどこかで、何か動いているものはありますか?」
また立ち上がって、今度は一人一人、間隔を十分とって、ゆっくりと歩いていく。
「風を感じてみてください。感じたら立ち止まって、味わって。風の通り道を探してみてください。」

芝生広場にて
階段を上りきり、広い芝生広場に出た。あたり一面、シロツメクサ。

「せっかくですから、靴を脱ぎ、裸足になって、地面の温度と草の感触を味わってみましょう。」

広場の奥に歩いていくと、一本の大きなシラカシがあった。
「触って幹の感触を味わって。それから、幹を抱きしめてみましょう。」

このシラカシの下で、皆、横たわり、空を見上げた。

「目を閉じて、指先から順に力を抜き、全身リラックスして、身体を休めましょう。ゆっくり呼吸をして樹の香りをいただきましょう。」

どれくらい時間が経っただろうか、ゆっくりと起き上がると、Hさんは、皆にお茶をふるまっていた。「クロモジ茶ですよ。葉ではなく、枝の方のお茶です。香りを楽しんでくださいね。」

おかずは、サワラの葉と実の香り。なんか、最初の頃よりも、香りに敏感になったような気がする。

そして、身体が清々しい。心も凪いている。まっさらに戻った私の心身。
すっかり元気になり、広場から元いた場所へと下っていく間、目についた好きな花や樹々、あるいは生き物たちと心の中で挨拶をした。



出発地点に戻り、今の気分と体調を記入して提出、解散。全行程約90分。
満ち足りた気分で、会場を後にした。
ふりかえり

森林散歩は私のルーティンのようなもので、しょっちゅうしているが、ここまで五感を徹底的に働かせたことはなかった。むしろ、気になったものを追及したり、あれこれ物思いにふけったりすることの多い、知的思考散歩のようなものだった。
もちろんそれでも十分、くつろげるものなのだけれども。
本当の癒しを得るには、思考は邪魔なのだな。
東洋思想では、それは常識だ。西洋では、それはマインドフルネスと呼ばれる。感覚を研ぎ澄まし、心が凪いだ状態。
そのような状態でこそ、フィトンチッドをはじめとする森林のパワーを存分に吸収できるのだろう。
Go Hug A Treeという「木を抱きしめる」セラピーは知っていたが、五感であらゆる要素を味わう森林セラピーというものは、今回が初めて。素晴らしい体験だった。それも、森さえあれば、いつでもだれでも味わえる体験だ。
(植物に触ったり味わったりすることに関しては、知識のある人の指示に従わないと、毒にやられるなど、危険なこともあるので注意。)
これからの森林散歩では、できるだけ、思考をお休みし、五感を研ぎ澄まして、森の恵みを浴びることにしよう。と思った。
森林浴。超おススメ。


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