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売り物ですから

アマノ文筆クラブ企画参加作品

まえがき
デパートのきらきらする棚や、新しいものたちの匂いは、子どもの心をワクワクさせます。小さな手で触ってみたい──そんな気持ちを大切に描いた短いお話です。


本文:売り物ですから
アキくんは、なんでもさわるのが大好き。
ある日、デパートの食器売り場で、ガラスでできたお気にいりのキャラクターのコップを見つけました。きらきら光って、とてもきれいです。

アキくんが手を伸ばすと、店員さんが優しく言いました。
「売り物ですから、坊や、さわらないでね。」
アキくんは小さくうなずいて、手を引っ込めました。
でも、どうしても触りたくてたまりません。

店員さんが向こうへ行ったすきに、アキくんはこっそり見つめていました。
すると、不思議なことに、そのガラスのコップがふわりと声をかけてきました。
「アキくん、君のお家におじゃましてもいい?」
アキくんはびっくりして、でも嬉しそうに答えます。
「いいよ。」
コップは続けました。
「今から行きたいんだけど、行ってもいい?」

アキくんはお母さんに聞こうと辺りを見回しました。ところが、いっしょに来たはずのお母さんの姿が見えません。人ごみの中で、お母さんの顔がどこにも見えず、不安で涙がこぼれてきました。

コップはそっと言いました。
「泣かないで。お母さんはすぐ戻ってくるよ。ぼくがここにいるからね。」
アキくんはコップのやさしい声にうなずきました。しばらくすると、遠くから 「アキくん!」 とお母さんの声が聞こえました。アキくんは大きな声で 「ぼくここだよ!」 と答え、駆け寄りました。

家に帰ると、アキくんはお母さんに、ガラスのコップが話しかけてくれたことを嬉しそうに話しました。お母さんは微笑んで、そのコップを買ってくれました。
アキくんは大人になっても、そのコップを大切にしました。
だって、ガラスのコップは、ずっと変わらない大事な友だちなのです。


イラスト:ChatGPT

あとがき
大人になっても、お気に入りのものがあります。ボロボロになっても、汚れてもずっと一緒の、友だちのようなもの、そんな物語を感じて頂けたら嬉しいです。最後まで読んで下さりありがとうございます。

売り物ですからに書かせて頂きました。
甘野さん、よろしくお願いします。


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