かすみのラブレター
🍊第54回 3つのお題(昭和ノスタルジー)
🎈お題①:「消えた伝言版」
🐾お題②:「下駄箱の手紙」
⏳お題③:「茜色の自転車」
お題④イラストから空想した世界を書いて下さい。
まえがき
スマホもLINEもなかった頃。
待ち合わせに遅れたら、駅の伝言板にメッセージを書いた。
好きな人に会えないだけで、一日中落ち着かなかったあの頃。
これは、伝えたかった言葉と、伝わらなかった想いのお話です。
本文
第1話 消えた伝言板
「かすみ、遅いな。先に帰ったんやろか」
いや、そんなことはない。何か事情があったんや。
僕は駅の伝言板に、
「塾があるから先に帰る」
と書いた。
かすみ、ほんまどないしたんやろ。
僕は、消えかけていた伝言板の文字に気づかないまま家に帰った。

第2話 下駄箱の手紙
次の日、学校へ行くと、かすみは休んでいた。
先生に聞いても、
「家の事情や」
としか教えてくれない。
心配になった僕は、帰りにかすみの家へ行こうと思った。
その時、下駄箱の中に入っていた手紙は、僕の靴に押されてぐちゃぐちゃになっていた。
僕は手紙の存在にも気づかないまま、かすみの家へ向かった。
しかし家には誰もいなかった。
近所のおばさんに聞くと、
「夜逃げしたらしいよ」
と言う。
僕の胸はざわざわと騒ぎ始めた。

第3話 茜色の自転車
かすみの乗っていた茜色の自転車が、道路脇に止められていた。
もう、かすみには会えないのかもしれない。
そう思うと涙があふれた。
駅へ向かう途中、僕はふと伝言板を見た。
そこには消えかけた文字が残っていた。
かすみの字だとすぐにわかった。
「ごめん、しんちゃん。また、いつか会おう!」
その文字を見た瞬間、胸が張り裂けそうになった。

第4話 かすみのラブレター
かすみがいなくなってから、学校にいても楽しくなかった。
ある日、上履きに履き替えようとして、下駄箱の中に何かが入っていることに気づいた。
引っぱり出してみると、かわいい便せんだった。
かすみの字だ。
『しんちゃん、ごめんな。
びっくりしてるやろな。
あたいは親の都合で遠くへ行くけど、いつかしんちゃんに会いに行くから待っててや。
彼女作ってもええけど、あたいのこと忘れんでな。』
僕はその手紙を、今でも大切に持っている。
第5話 茜色の空
僕は大学を卒業し、そのまま地元で就職した。
街から出たくなかった。
かすみが、いつか帰ってくる気がしたからだ。
ある日の夕方。
ピンポーン。
呼び鈴が鳴った。
ガラガラと玄関を開けると、見たこともないくらいかわいい女性が立っていた。
「こんなかわいい人、知らんで」
思わずつぶやいた瞬間、
「久しぶり。良かった。まだここにおったんや」
その声、その話し方。
僕はすぐにわかった。
かすみや。
第6話 金魚のふん
それからの僕らは、子どもの頃と同じだった。
いつも一緒。
どこへ行くにも一緒。
まるで金魚のふんみたいに。
そして僕らは結婚し、新しい家族を迎えた。
茜色の自転車の思い出も、伝言板の文字も、下駄箱の手紙も。
全部、大切な宝物になった。
あとがき
伝言板も、下駄箱の手紙も、今ではあまり見かけなくなりました。
便利な時代になったけれど、伝えたい気持ちは昔も今も変わりません。
もしあの時、しんちゃんが伝言板を見ていたら。
もし手紙にすぐ気づいていたら。
そんな「もしも」を越えて再会できた二人は、案外運が良かったのかもしれませんね。
茜色の空を見るたび、二人はあの日のことを思い出しているのでしょう。
※この物語はフィクションです。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします😊これからも続けていく”未来の種”になります。よろしくお願いします。(❁´◡`❁)