サンタの秘薬
毎週ショートショートnoteの企画参加作品
まえがき
世界には、
完成した瞬間に役目を終える研究があります。
それは、記録に残らず、
名前も残らないかもしれません。
けれど、確かに世界を変えた研究です。
本文
隙間風の吹く研究所に、
サンタという別名を持つ老人がいた。
「教授、研究費は底をつきました。
もうこれ以上、研究を続けるのは無理です。
私にも生活がありますので、
今日で、ここを辞めさせていただきます。
教授も、お身体を大切に」
「ひえー、寒い。
外とここ、変わらないぜ……」
ドアが、バタンと閉まった。
老人は、その音を聞いて、
かすかに微笑んだ。
「……さぁ、邪魔者がいなくなった。
これからが、わしの本番じゃ」
この秘薬さえ完成すれば、
わしはノーベル賞をもらえる。
それほど価値のある研究じゃ。
「この《サンタ酸》さえ、
うまく配合が合えば……頼むぞ」
老人は、年季の入ったノートに、
静かに記していった。
この夜の気温は、マイナス二十度。
研究所の気温は……二十度?
「……えー、サンタ酸、成功……」
老人は微笑み、
その場に座ったまま、
ゆっくりと目を閉じた。
――次の日の朝。
忘れ物を取りに来た研究員が、
扉を開けて、息をのんだ。
そこは、
昨日とは、まったく違う世界に
変わっていた。
(419字)

あとがき
何が起きたのかは、
誰にもわかりません。
ただ、
その日を境に、
世界は少しだけ、
やさしくなったのです。
それで十分だと、
サンタは知っていました。
※この物語はフィクションです。
毎週ショートショートnoteのお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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