始発電車に乗って
せりふ三題噺の企画参加作品
まえがき
今日は少しだけ、余白を意識して書いてみました。
感情はなるべく置かず、風景と行動だけを残して。
始発のホームに立つ人の、静かな時間です。
始発電車に乗って
僕は彼女を駅で待っていた。
来るかどうかは、わからない。
始発電車の時刻よりも早く来て、ホームに立っている。
持ってきたのは、リュックひとつ。
家も、仕事も、すべて置いてきた。
彼女が来なくても、もう戻らないと決めている。
ポケットの中のカイロだけが、少しだけ温かい。
「なんで今日なんだろうね。」
ここで待っている、と伝えたとき、彼女はそう言った。
その言葉が、今になって気にかかる。
今日は、何があるのだろう。
ホームで新聞を読む人の文字が目に入る。
――確定申告はお早めに。
もう、そんな時期か。
僕は確定申告も、家も、すべて置いてきた。
始発電車の時間がせまる。
ドアが開く。
僕は振り向き、階段を見つめた。
駆け上がってくる姿を探す。
ドアが閉まる。
その瞬間、
彼女の影が――

あとがき
彼女は来たのか、来なかったのか。
間に合ったのか、間に合わなかったのか。
答えは書きませんでした。
「なんで今日なんだろうね。」
その一言だけが、静かに残っています。
読んでくださった方の中で、
それぞれの“今日”が浮かべば嬉しいです。
※この物語はフィクションです。
せりふ三題噺のお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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