華のないふたり
アマノ文筆クラブの企画参加作品
まえがき
お題「華のないふたり」から生まれた物語です。
結婚式という華やかな場に立ちながら、
心のどこかにぽっかりと穴が空いた二人。
雨が静かに見守る中で、少しずつ心が近づいていきます。
本文
結婚式の披露宴会場で、幸せそうな二人を見つめる友人たちがいた。
一人は新婦、もう一人は新郎の友人。
新婦の友人・晶子は、かつて新郎の祐介からプロポーズを受けていた。
だが、彼女はその想いを断った。
理由は——今取り組んでいるプロジェクトをどうしても成功させたかったから。
祐介はそれを待てなかった。
一方、新郎の友人・聡は、片想いのまま終わった恋を抱えていた。
告白することもできず、ただ笑顔で祝福するしかなかった。
華やかな会場の灯りの中、ふたりだけがどこか違う時間にいた。
笑い声や拍手の音が遠くに聞こえる。
そんな中で、ただ時計の針だけが確かに動いていた。
披露宴が終わり、会場の外は雨。
タクシーもつかまらず、傘もない晶子はホテルの前で降り続く雨を見つめていた。
聡も濡れた道を歩き出そうとした時、
晶子が小さな声で言った。
「良かったら、近くのカフェで雨宿りしませんか?」
「いいですね。」
少し古びたカフェで、二人はコーヒーを飲んだ。
ほとんど話さない聡だったが、晶子の淋しそうな横顔を見て、
昔のお笑いのネタを再現してみせた。
晶子は吹き出し、少しずつ笑顔に彩られていった。
「私たち、今日は華のないふたりだったわね。」
聡は微笑んで答えた。
「そうだね。君は素敵だから、きっと華が咲くと思うよ。」
晶子は照れくさそうに笑った。
「あなたが咲かせてくれる?」
雨は二人の会話を、ただ黙って聞いていた。
あとがき
華やかな舞台の中心にいなくても、
静かな場所でそっと寄り添うことで咲く“華”がある。
それは目立たないけれど、確かにあたたかい。
そんな“華のないふたり”の、小さな奇跡を書きました。
※この物語はフィクションです。
甘野充さんのアマノ文筆クラブのお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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