曼珠沙華の恋
毎週ショートショートnoteの企画参加作品
まえがき
彼岸花は、別れや死を思わせる花と言われます。
けれど私は、この赤を「恋の色」だと思います。
燃えるように咲き、そして静かに散る──
そんな曼殊沙華の想いを、ひとつの恋物語にしました。
曼珠沙華の恋
彼岸の土手に咲く曼殊沙華。
毎年、赤い炎のように揺れながら、ひとりの男の子を見つめてきた。
自転車を漕いで通学する姿。
小さな背中にランドセルを揺らし、やがて学生服を着るようになった。
その成長を、花は土手の上から静かに見守り続けた。
女の子と歩く姿を、一度も見たことがなかった。
花はいつしか、幼い恋のような気持ちを抱いていた。
彼岸花が咲く季節は、花にとって恋を確かめる季節でもあった。
──そして今年。
男の子はかわいい女の子と手をつなぎ、笑顔で横を通りすぎた。
その瞬間、曼殊沙華は震え、赤い花弁の奥から涙をひと粒落とした。
それは曼珠沙華の恋の終わりを告げていた。

あとがき
花に恋心を重ねると、人の切ない気持ちと響き合います。
曼殊沙華の赤は、炎の色であり、涙の色。
ひそやかな想いを抱いた花の物語を、
心に残していただけたら嬉しいです。
毎週ショートショートnoteの「曼珠沙華は恋をする」に書かせて頂きました。お題をありがとうございます。
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