アマノ文筆クラブ「狭き門をこじ開けろ!」
アマノ文筆クラブの企画参加作品
狭き門をこじ開けろ!
彼女と僕は、長い付き合いだ。
彼女はずっと、「親に会ってほしい」と願っていた。
だが、僕にはどうしてもできなかった。
なぜなら、僕の心には“小心者”が住んでいるからだ。
その狭き門を、僕は人生で一度も開いたことがない。
僕の心が、毎日のように呟く。
「狭き門をこじ開けろ!」
だが、小心者の僕は、その門の前で立ち尽くしてばかりいた。
そんなこんなしているうちに、彼女は結婚適齢期をはるかに超えてしまい、少しずつ僕に愛想をつかし始めていた。
このままではいけない。
彼女をつなぎ止めるには、狭き門をこじ開けるしかない。
そう思った僕は、ついに“爆弾”を仕掛けた。
――彼女の家へ行くことにしたのだ。
居間へ通され、僕は緊張でガチガチになっていた。
座っている彼女の父親の顔も、ちらっとしか見られない。
その時だった。
テーブルの角に足をぶつけ、僕は盛大によろけた。
驚いたテーブルの下の猫が、慌てて逃げていく。
僕は何事もなかったように正座をし、深々と頭を下げた。
すると彼女の父親が、唐突に口を開いた。
「娘はやらん。」
その言葉を聞いた瞬間、彼女が吹き出した。
「お父さん、そのセリフ言いたかっただけやろ。」
父親は満足そうにうなずく。
「そうや。いつか言うてみたかってん。」
親子で笑っている姿を見て、僕は口をあんぐり開けたまま放心状態になっていた。
すると父親が、改めて僕に聞いた。
「で、正直なところ、娘をもらう気はあるんか?」
僕はしどろもどろになりながら答えた。
「え、まぁ、その……僕で良ければ……その、あの……け、結婚してもらえたら、う、嬉しいです。」
父親は大きくうなずいた。
「よう言うた。ほな、任せたで。」
顔を上げると、彼女が意味深な笑みを浮かべていた。
それから僕たちは結婚し、今では彼女の両親と一緒に暮らしている。
そして毎晩、
「今夜は負けへんで!」
と、義父と将棋で真剣勝負をしている。
僕の小心者の心は、今でも健在だ。
けれど、あの時、狭き門をこじ開けたお陰で、僕は彼女と結婚することができた。
「婿どの、今日は手加減してくれ。」
今日も義父の声が、居間に響いている。
アマノ文筆クラブのお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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