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愛の水面下

アマノ文筆クラブの企画参加作品


さざなみ急行の車内に、千尋と恒一は並んで座っていた。

小さなボストンバッグを大事そうに抱えながら、千尋は言った。

「私たち、これからどこに行くの?」

「僕らが一緒なら、君は幸せなんだろう?」

「ええ、そうよ。あなたさえいれば」

「心配ないよ。今は、僕たちの幸せだけを考えよう」

そう言って、恒一は千尋の手を強く握りしめた。


さざなみ急行は海沿いを走り、都会の喧騒は少しずつ遠ざかっていく。

「私、お金は置いてきたわ。家のお金は持ち出せなくて」

「ああ、それでいいよ。僕も持ってきてない。でも大丈夫だ。君と暮らすには、十分なお金はあるから」

千尋は恒一を見つめ、やさしく微笑んだ。
その顔は、とても幸せそうだった。


電車を降りた二人はタクシーに乗り、海辺のホテルへと向かった。

部屋の窓からは海が見え、太陽はゆっくりと沈みかけている。

「ねぇ、夕焼けがきれいよ」

「ああ、美しいね。僕の目に、君を焼き付けておくよ」

「愛してる」

「僕も」


こんこん、とノックの音がした。

「僕が出るよ」

ドアを開けると、初老の男が立っていた。

「あ、お父さん……」

次の瞬間、千尋の腕は強くつかまれ、そのまま引き離されていく。

恒一は、その光景をただ見ていることしかできなかった。


「恒一さん、愛してる」

その言葉だけが、耳に残る。


気がつけば、部屋には恒一一人。

暗くなり始めた室内に、
その声だけが、消えずに漂っていた。

※この物語はフィクションです


イラスト:ChatGPT


アマノ文筆クラブのお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。


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