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寒い朝の配達

せりふ三題噺の企画参加作品

まえがき

寒い朝は、どうしても頭も心も動きが鈍くなる。
そんな日に限って、大事なことが重なったりする。
これは、寝坊した朝に届いた、小さな配達の話です。


寒い朝の配達

私は今日も寝坊をした。
朝ご飯も食べず、カバンだけを持って家を出る。

後ろの方で声がした気がしたけれど、無視して扉を閉めた。

白い雪が降り始め、私はマフラーを口元まで引き上げる。
今日から試験なのに、ろくに勉強もしないまま寝てしまった。
このままだと赤点やわ……そんなことを、ひとりごとのようにつぶやいていた。

ふと顔を上げると、何かが見えた。

三輪車。
……弟や。

「はい、忘れ物」

「あんた、寒いのに持ってきてくれたん? おおきに」

「弁当の中身、エビフライやで」

「……なんで、知ってんの?」

弟はにやっと笑う。

「お姉ちゃん、遅刻するでー」

「あ、ほな、おおきに。きーつけて帰るんやで」

私は弟から受け取った弁当を抱えて、学校へ向かって走り出した。

校舎の窓には、たくさんのつららが下がっている。
太陽の光を受けて、一際きらきらと輝いて見えた。

あかん。
こんな想像してる場合やない。
試験開始まで、少しでも勉強しよ。

……結果は散々やった。

昼休みになり、弟が持ってきてくれたお弁当を開ける。
すると、不自然な空白がひとつ。

もしや、ここには……エビフライがあったはず。

犯人は、あいつやな。


イラスト:ChatGPT

あとがき

寒い朝でも、思いがけない優しさに出会うことがあります。
それは立派な言葉じゃなく、
三輪車で届けられたお弁当や、
一匹消えたエビフライみたいなものかもしれません。

今日もどこかで、
「はい、忘れ物」
そんな声が届いていますように。
※この物語はフィクションです。

せりふ三題噺のお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。


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