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祖父のラジオ

🍊第53回 3つのお題(昭和ノスタルジー)
🎈お題①:「夕暮れの空き地」
🐾お題②:「祖父のラジオ」
⏳お題③:「兄のお下がり」

お題④イラストから空想した世界を書いて下さい。

まえがき

古い物には、不思議な力があります。

それは単なる物ではなく、その人が生きてきた時間や思い出が染み込んでいるからかもしれません。

今回のお題は「祖父のラジオ」「夕暮れの空き地」「兄のお下がり」。

そして、その先にある「僕の夢」。

昭和の香りが残る風景の中で、一人の青年が祖父から受け継いだものを見つける物語です。


本文

第一話 祖父のラジオ


イラスト:ChatGPT

祖父はいつもラジオを聞いていた。

時には流れてくる音楽に合わせて口ずさみ、静かな時間を過ごしていた。

長年連れ添った祖母を亡くした日も、祖父は背中を震わせながらラジオを聞いていた。

そんな祖父のラジオが、今は物置の奥に眠っている。

「もう使えなくなったから」

母はそう言った。

僕は祖父のラジオを聞いたことがなかった。

それでも、まだ修理すれば使えるかもしれないと思った。

修理店を何軒も回った。

けれど、どこへ持って行っても返ってくる答えは同じだった。

「古すぎて修理は難しいですね」

それでも諦めきれなかった。

僕は機械に強い大学の先輩を巻き込み、自分たちで修理することにした。


第二話 夕暮れの空き地


イラスト:ChatGPT

母に頼まれた買い物に出た頃には、空は夕暮れ色に染まっていた。

帰り道にある空き地の前で、僕は立ち止まった。

ここもいつか再開発されてしまうのだろう。

子どもの頃は、友だちと暗くなるまで遊んだ場所だった。

野球をしていて近所の家の窓ガラスを割り、大目玉をくらったこともある。

今では笑い話だ。

便利になった街は好きだ。

けれど、都会のざわざわした音は少し苦手だった。

何もないようでいて、何かがある。

そんな空き地の時間が僕は好きだった。

祖父のラジオは本当に直るだろうか。

そんなことを考えながら、夕暮れの道を歩いた。


第三話 兄のお下がり


イラスト:ChatGPT

僕には七つ年上の兄がいる。

今は海外勤務で、めったに実家へ帰ってこない。

ある日、母が兄の部屋を片付けていると、お下がりの服がたくさん出てきた。

「まだ着られるから」

そう言って僕に渡してくれた。

服を手に取ると、かすかに兄の匂いが残っている気がした。

兄は昔から何でもできた。

勉強もスポーツも得意だった。

文武両道という言葉は、兄のためにあるのではないかと思うほどだった。

祖父が亡くなった時、兄は帰ってこられなかった。

コロナ禍の真っ最中だったのだ。

代わりに祖父への手紙と香典が送られてきた。

葬儀の席で読まれたその手紙は、参列していた人たちの涙を誘った。

兄も祖父のことが大好きだったのだ。


第四話 僕の夢


イラスト:ChtaGPT

祖父のラジオは、部品の調達に時間がかかった。

それでも先輩と二人で修理を続けた。

そして、ついに完成の日が来た。

スイッチを入れる。

ジャラジャラという懐かしい音が流れる。

ゆっくりとつまみを回す。

雑音の向こうから、人の声が聞こえた。

そして音楽が流れ始めた。

祖父のラジオだ。

僕は初めて祖父が聞いていた音を聞いた。

お気に入りは洋楽のチャンネルだった。

後から聞いた話では、祖父は通訳の仕事をしていたらしい。

どうりで僕は、他の教科はそうでもないのに、英語だけは昔から好きだった。

今、僕は大学で英語を専攻している。

将来の夢は通訳になることだ。

今日もラジオから流れる英語の声や音楽に耳を傾ける。

洋楽が流れるたびに、祖父もこんなふうに聞いていたのだろうかと思う。

祖父のラジオは僕の宝物だ。

そして、僕の夢へ続く道しるべでもある。


あとがき

古いラジオは、ただ音を流すだけの機械ではありませんでした。

そこには祖父の人生があり、家族との思い出がありました。

夕暮れの空き地も、兄のお下がりも、過ぎ去った時間を思い出させてくれます。

昭和の風景は少しずつ消えていきます。

それでも、大切なものは形を変えながら受け継がれていくのでしょう。

祖父のラジオから流れる音は、今日も誰かの未来へと続いています。

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