似顔絵と俺
風まかせ文芸部企画参加作品
まえがき
芸術の秋。
人はなぜ、絵や音楽や詩に心を動かされるのだろう。
ある夜勤明けの男が出会ったのは、一枚の「似顔絵」だった——。
本文:似顔絵と俺
芸術の秋なんて、俺には関係ないことさ。
俺はいつものように夜勤明けの町を歩いていた。
ふと見ると、路上で似顔絵を描いている人がいた。
描かれている絵を見ていると、なぜか心がざわついた。
なんだ、このざわつきは——。
白髪の男性がこちらを見て言った。
「似顔絵を描きましょうか?」
俺は今の俺の顔を描いたって、どうせ疲れた顔だろうと思った。
けれど、口から出た言葉は「お願いします」だった。
白髪の男性は、あっという間に俺の顔を描いた。
紙の上に現れた俺を見た瞬間、心に地震が起きた。
胸の奥で、長いあいだ固まっていた何かが崩れていくのを感じた。
その似顔絵の俺の顔は、——笑っていた。
もう何年も笑っていないのに。
あとがき
誰かが描いた似顔絵の中に、忘れていた笑顔を見つける。
この作品のラストを書きながら、涙がこぼれました。
どうしてでしょうね…
最後まで読んで下さりありがとうございます。
風まかせ文芸部のお題に書かせて頂きました。
iさん、お題をありがとうございます。
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