『未来からの手紙』
毎週ショートショートnote参加作品
📬まえがき
ポストに手紙が届く。
その手紙が、未来から届いたものだったとしたら――
あなたは、開封しますか?
これは、「該当作梨(がいとうさくなし)」という不思議なお題から生まれた物語です。
不採用通知? 未来の予告? それともただの冗談?
書くことに人生をかけたひとりの男の、静かに怖い一通の手紙のお話です。
📖本文『未来からの手紙』
ポストに手紙が届いた。
宛名は、たしかに私だ。
差出人は――「未来出版社」。
封を開けると、こう書いてあった。
「2025年の直木賞にノミネートされるはずなのに、該当作梨。」
――該当作梨?
私は何年も作家を目指して生きてきた。
妻は子どもを連れて出て行った。
アルバイトをしながら、書く時間を絞り出している。
寝る間を削って書いていたら、本当に死にそうになった。
私は、直木賞を獲って、
妻と子どもに言ってやりたかった。
「お前たちが捨てたのは、未来の直木賞作家だ」と。
でも、その“未来”の手紙には、
**「ノミネートされるのに、該当作梨」**と書いてある。
つまり、候補に挙がるくらいの実力はあった。
なのに――選ばれなかった。
どうしても確かめたくなった。
自分の名前が、本当にノミネートにあったのか。
それとも、なかったのか。
数日後、夜のニュース。
直木賞のノミネート作品が発表された。
私がテレビの前から動けずにいると――
画面に映る名前の中に、見覚えのある名前があった。
似ている。でも、違う。
私ではない。別人だ。
そしてさらに数日後――
直木賞が発表された。
画面にはこう表示された。
「今回は選定の結果、該当作なし。」
……。
私はもう一度、あの手紙を読んだ。
「2025年の直木賞にノミネートされるはずなのに、該当作梨。」
該当作なし
該当作梨
――これは、
未来からの警告だったのか。
それとも、
未来さえも、私をからかっているのか。
私は、あの一通の手紙を、
いまでも机の引き出しの奥にしまっている。
直木賞の夢と一緒に。

✒あとがき
この物語を書いたきっかけは、「該当作梨(がいとうさくなし)」という、ある意味“ダジャレのような”お題でした。
でもその言葉にふれて、なぜか浮かんできたのは、作家を目指して生きる者の、報われなさと執念と孤独でした。
ふとタイトルを打ったとき、「未来からの手紙」がするすると浮かんできました。
もしかするとこれは、私自身が未来から受け取ったメッセージなのかもしれません。
“該当作梨”――その言葉が、あなたの心にどんな風に残るのか。
それもまた、未来のことですね。
たはらにかさんの毎週ショートショートnoteのお題「該当作梨」に
書かせて頂きました。
お題ありがとうございます。
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