月見ヶ丘小学校3年3組
せりふ三題噺の企画参加作品
まえがき
「お下品ですよ」というセリフと「消しゴム」「叫ぶ」「月見」。
4つのお題から生まれた小学生たちの物語です。ふざけるクラスの笑いと、友だちの涙、そして月がやさしく照らす夜。子どもらしい素直さを描きました。
本文
月見ヶ丘小学校の蒼太とさくら
月見ヶ丘小学校3年3組。
蒼太は今日もふざけて、黒板の前でズボンを下げるしぐさをしていた。
すると蒼太のお尻に消しゴムが飛んできた。クラス中は大笑い。
そこへ担任の中川先生が入ってきて、
「お下品ですよ」と注意した。
蒼太はあわててズボンをあげようとするが、チャックがひっかかってなかなか上がらない。クラス中は必死に笑いをこらえていた。
「この消しゴムは誰のですか?」
先生が手に握った消しゴムを掲げると、誰も名乗り出なかった。生徒たちは平静を装いながら、笑いをかみ殺していた。
授業が終わり、いつものように河川敷を歩く蒼太の前に、さくらが立っていた。
「おい、さくら、なんか元気がないな」
「昨日、お父ちゃんとお母ちゃんがけんかしてな、悲しかったん。朝起きたら、お母ちゃんがいてへんかった。」
今にも泣きだしそうなさくらに、蒼太は言った。
「大きな声で叫ぶとすっきりするって、おやじが言ってた。やってみようか?」
「うん、やってみたい」
蒼太は叫んだ。
「消しゴムぶつけたん誰か、出てこい!」
さくらも叫んだ。
「お母ちゃん、帰ってきて!」
「俺は大きくなったら、大きな男になる!」
「私は学校の先生になる!」
二人は大声で叫ぶうちに笑い出していた。
蒼太は言った。
「さくらのお母さん、戻ってくると思うよ。だってさくらのこと大事に思ってるもん。」
「うん、うちもそう思ってる。今はお母さんがしんどいんやな。」
二人は「また明日、月見ヶ丘小学校で会おうな」と言って別れた。
さくらが家に近づくと、カレーの匂いがしてきた。
玄関を開けると、お母さんが台所に立っていた。
「ごめんな、置手紙もせんといなくなって。おばあちゃんが危篤やって聞いて、急いで出て行ったんよ。お父さんと喧嘩してたから言いづらくて…心配させたな。」
さくらの頬を、我慢していた涙がつたった。
「ううん、お母ちゃん。ありがとう」
その夜、蒼太は空を見上げた。
月はやさしく光り、蒼太の心をそっと照らしていた。

あとがき
笑いと涙、子どもの純粋な心の動き。
消しゴムひとつがきっかけで、友だちの痛みを分かち合い、家族の絆を信じる力へとつながりました。
月が静かに見守る夜、子どもたちの声はきっと天に届いていたのでしょう。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・出来事とは関係ありません。
せりふ三題噺のお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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