恋する伯爵
毎週ショートショートnote企画参加作品
まえがき
お題「メルトダウンする伯爵」から生まれた物語です。
恋の熱で心が溶けていく——それは破滅ではなく、
人が誰かを想うときにしか生まれない、
美しい“心の融解”なのかもしれません。
本文:恋する伯爵
小さな国の名もない伯爵が、舞踏会で見た女性に恋をしました。
名前もわからない。いつ会えるかもわからない。
それでも伯爵は、恋に落ちたのです。
伯爵は女性を探しました。
名簿に載っている女性を一人ひとり訪ねていきましたが、
どの女性も違いました。
恋しい思いは募るばかり。
やがて伯爵の心はメルトダウンしていきました。
背が高く、誰もが憧れるような美しい伯爵は、
みるみるやつれていきました。
心配した両親は、国中の女性を宮殿に招き、
もう一度、舞踏会を開くことにしました。
伯爵が恋した女性を探すために——。
けれど、その夜も見つかりませんでした。
ある日、恋わずらいで寝込んでいる伯爵のもとに、
新しいメイドがやってきました。
そのメイドはとても美しく、
伯爵は一目で恋に落ちました。
ほどなくして、伯爵はメイドと結婚しました。
国中が祝福し、幸せな日々が続きました。
そんなある日、祝宴の最中に、
ひとりの美しい女性が伯爵の前に現れました。
その女性こそ——かつて舞踏会で出会い、
恋わずらいで寝込むほど想い続けた、あの女性でした。
伯爵は立ち尽くし
メルトダウンする伯爵となりました。
(478字)

あとがき
恋の熱は、時に魂を溶かす。
けれどそれは、誰かを本気で愛した証。
メルトダウンした心は、永遠の氷となって、
今もどこかの夜空で、やさしく光っているのかもしれません。
🕯タグ
#メルトダウンする伯爵 #恋する伯爵 #みかんの寓話 #恋の物語
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