幸せ色のトースト
ビンゴでエッセイの企画参加作品
20代の頃、私は博多駅近くの歯科で歯科助手をしていた。
毎朝、7時のバスに乗って博多駅まで行き、そこから歯科まで15分ほど歩いて通った。
その途中に、一軒の喫茶店があった。
ある朝、「朝食あります」という看板が目に入った。
喫茶店の朝食って、どんなものだろう。
興味がわいた私は、思い切ってドアを開けた。
店内には、出勤前らしいサラリーマンが数名いた。
見ると、大きなトーストが半分。その横には目玉焼きとベーコン、サラダが添えられている。
美味しそう。
そう思った私は、同じものを注文した。
値段は定かではないが、380円くらいだったような気がする。それに、コーヒーもついていたような。
カウンターの席に座り、マスターが私の朝食を作る姿を眺めていた。
しばらくして、朝食が運ばれてきた。
焼きたてのトーストをほおばる。
カリッとした音。
そして、マーガリンの香り。
「あ、美味しい」
目玉焼きも、焼き加減がちょうどいい。
朝から、なんて贅沢な時間なんだろう。
心が幸せ色に染まっていく。
そして、コーヒーの香りが私を魅了した。
それから私は、時々その喫茶店に立ち寄るようになった。
出勤前のほんの短い時間。
トーストとコーヒーを味わうだけなのに、そこには小さな幸せがあった。
あれから、ずいぶん長い年月が過ぎた。
あの喫茶店は、まだあるのかな。
トーストを食べると、ときどきあの頃の朝を思い出す。


ビンゴエッセイ企画に参加させて頂きました。
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