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あの日の記憶

シロクマ文芸部の企画参加作品

三月は始まりの季節。
そして、別れの季節でもある。

私はもう、思い出せないくらい前に
高校を卒業し、就職した。

その就職先へ向かうため、船に乗った。
岸壁には友だちや親がいた。

握ったテープ。
それがちぎれて海に落ちた瞬間、
悲しみが押し寄せてきた。

今日から一人で生きていく。
守る人のいない場所で。

そんなセンチメンタルな気持ちを乗せて、
船は沖へと進んでいった。

美しい南の島の景色を眺めながら、
「しばらくお別れよ。また帰ってくるから」
そう思っていたはずなのに。

時は流れ、
あの初々しさは影を潜め、
少しも残されていないのが、実に残念である。

三月になると、
遠い記憶の中の
可愛かった自分を探す。

どこかに置き忘れていないかと、
心の引き出しをそっと開けてみる。

でも、まだ見つからない。

どこへ行ったのでしょう。

あなた、知りまへんか?

――おわり

イラスト:ChatGPT

あとがき
あ、ここにいた…

シロクマ文芸部のお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。


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