虹色創作部「赤とんぼの見た景色」
まえがき
秋の夕暮れに舞う赤とんぼは、どこか切なくて懐かしい存在です。
今回は、赤とんぼの視点を通して描かれる、ひとりの少女の小さな心の物語を書きました。
どうぞ、静かな気持ちで読んでいただけたら嬉しいです。
本文:赤とんぼの見た景色
千絵ちゃんは、夕暮れの公園でブランコをこいでいました。
おかあさんの帰りを待っているのです。
赤とんぼは、千絵ちゃんがおかあさんを思う気持ちをずっと見つめていました。
千絵ちゃんがもっと小さかった頃、おとうさんが交通事故で亡くなりました。
その頃は、おとうさんがブランコを押してくれていました。
今では、自分で上手にブランコをこぐことができます。
赤とんぼはたずねました。
「さみしいでしょ?」
千絵ちゃんは首を振って答えました。
「ううん、さみしくないよ。」
「どうして、さみしくないの?」
千絵ちゃんは小さな声で言いました。
「さみしいって言ったら、おかあさんが悲しむから。
だから、さみしくないって思うことにしたの。」
赤とんぼの目から、ひとすじの涙がこぼれました。
そのとき――
「千絵ちゃん」と呼ぶおかあさんの声が聞こえました。
千絵ちゃんはブランコを降りて、おかあさんのもとへ駆け寄っていきます。
赤とんぼは二人の後ろ姿を見守りながら、羽を羽ばたかせて夕焼け空へと飛んでいきました。

あとがき
赤とんぼは、人の心の奥にある「さみしさ」や「やさしさ」を映す鏡のような存在かもしれません。
千絵ちゃんの「さみしくない」という言葉は、強がりでありながら、おかあさんを思いやる優しさでもあります。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・出来事とは関係ありません。
虹色創作部のお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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