何もないあの頃に戻って
風まかせ文芸部の企画参加作品
【まえがき】
子どもの頃の記憶は、ときに心の奥で眠っています。
その記憶がふと起き上がってきた時、
あの頃の光景や気持ちが波のように押し寄せてくるものです。
今朝、ふと「小さい頃の私」を思い出しました。
そこには、現実と空想のあいだで、必死に自分を守ろうとしていた
小さな私がいました。
あの頃の思い出を、そっと綴ってみます。
【本文】
自動で朝ごはんが出て、
素敵な洋服に毎日着替えて、
車の後部座席に乗って学校に行く──。
小さい頃の私は、そんな世界を空想していた。
どうしてそんなことを考えていたのか。
それは、家が貧乏だったからだ。
小学生の私は「貧乏」という言葉すら知らない。
ただ、給食費が払えなくて先生に催促され、
黒板に書かれた自分の名前を見て、
胸の奥がきゅっと締め付けられたことだけは覚えている。
親は一生懸命働いていた。
それでも、クラスの子にいじられ、
私は毎日、全身にとげを出して生きていた。
環境は変えられない。
だけど、空想なら、いつでも自由だった。
自動で何でも出てくる世界。
誰にも傷つけられない世界。
小さな私はひそかに逃げ込んでいた、
たった一つの「幸せの場所」だった。

【あとがき】
大人になった今、
あの頃の私の気持ちが、ようやく少しわかる気がします。
現実は苦しくても、空想の世界の私は、
いつだって幸せで、守られていて、満たされていた。
あの空想があったから、
今の私の創作があるのかもしれません。
幼い頃の私へ。
あの頃のあなたが守った心は、今、とても豊かに育っています。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
風まかせ文芸部のお題に書かせて頂きました。
iさん、お題をありがとうございます。
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