かんざしの秘密
🍊第45回 3つのお題(日本むかし話)
🎈お題①:「時を渡るかんざし」
🐾お題②:「一夜だけ咲いた花」
⏳お題③:「河童の忘れ物」
お題④イラストから空想した世界を書いて下さい。
タイトル
かんざしの秘密
少女は、祖母の形見のかんざしをいつも身につけていた。
祖母は生前、そのかんざしを見つめながら言っていた。
「これはな、時を渡るかんざしじゃ。困っている者を、あるべき時へ導く」
その意味を、少女はまだ知らなかった。
ある夜――
かんざしが淡く光り、少女を外へと誘った。
導かれるまま夜の道を進むと、
そこには一輪の、大きく美しい白い花が咲いていた。
その花を見つめた瞬間、声が響いた。
「……あの人に伝えて。私は花に変えられてしまったの。急いで、時間がないの」
「あなたは……誰?」
「五重の塔にいる人に伝えて。あの人も囚われているの」
少女はかんざしに導かれ、五重の塔へ向かった。
塔の中は静まり返り、誰の姿もない。
階段を上り、五階へたどり着くと、一人の若い武士が閉じ込められていた。
「誰だ」
「助けてほしいと頼まれて来ました。花の……声に」
武士は驚いたように言った。
「君の姿は見えないが……君には私が見えるのか?」
「ええ、見えます」
少女が鍵に触れると、不思議なことに鍵はほどけるように開いた。
二人は白い花のもとへ戻った。

武士は静かに言った。
「やはり……奴の仕業か」
「奴?」
「人の欲や争いを糧にする“影の者”だ。
あの者は、私たちを引き裂き、彼女を花に変え、私はここに閉じ込められた」
「元に戻す方法はあるんですか?」
「ある。だが、それには“河童の忘れ物”が必要だ」
少女は再び、かんざしに導かれ、川の上流へ向かった。
やがて水面が揺れ、河童が姿を現した。
「これを持っていきなさい。急げ、夜が明ける」
河童は小さなかごを差し出した。
「これは……?」
「封じられた時を、ほどくものじゃ」

少女は急いで戻り、そのかごを武士に渡した。
武士がかごを開いた瞬間――
白い花は風にほどけるように揺れ、やがて一人の美しい女性の姿へと戻った。
「ありがとう……」
女性は微笑み、武士の隣に立った。
「私たちは、ここを離れます」
武士は少女に深く頭を下げた。
「礼を言う。君がいなければ、私たちは戻れなかった」
二人の正体は、山の神と水の神だった。
そして――
祖母は、その影の者を封じ続けていた、魔界の守り神だったのだ。
それからも少女は、そのかんざしを大切にしたという。
時を渡り、願いを結び、
闇をほどく力を宿した――
不思議なかんざしを。

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