恋は突然やってきた
風まかせ文芸部の企画参加作品
まえがき
恋は、準備も覚悟もいらない。
ただ、ほんの一瞬の出来事が、
心のリズムを変えてしまうことがある。
これは、そんな放課後の話。
本文
僕は夕方の教室で、ぼんやりと校庭を眺めていた。
彼女の追いかけるボールになった気持ちで。
3秒後、僕は彼女の至近距離にいた。
彼女が校庭で倒れたからだ。
部活の仲間に混じり、僕は彼女を抱きかかえ、保健室へ走った。
他の生徒は顧問と保健室の先生に連絡を入れる。
僕は、心臓の鼓動が彼女に聞こえていないか、
そればかりが気になっていた。
保健室のドアを開け、
彼女をベッドに寝かせる。
汗をかいた額に、そっと手をのせた。
彼女は、ゆっくりと目を開け、僕を見た。
僕は少し目線をそらしながら、
「大丈夫?」と声をかけた。
彼女は、声にならない声で
「ありがとう」と言って、また目を閉じた。
その直後、保健室の先生が慌てて駆け込んできた。
彼女は一過性の心臓発作だったが、
念のため、家族と救急病院へ向かった。
静かになった保健室に、僕だけが残された。
彼女の美しい寝顔が、何度も頭に浮かぶ。
頬が赤くなり、みみたぶが熱くなる。
心臓の鼓動が、さっきよりも速い。
いつも遠くで見ていた彼女が、
こんなにも近くにいたこと。
そして、
こんなにも強く心に残ったこと。
――恋は、突然やってきた。

あとがき
3秒で変わるのは、距離だけじゃない。
心の鼓動も、視線の意味も、
きっとその瞬間から、少しずつ変わっていく。
そんな放課後の記憶。
※この物語はフィクションです。
風まかせ文芸部のお題に書かせて頂きました。
iさん、お題をありがとうございます。
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