見出し画像

ショートどうだ!?

アマノ文筆クラブの企画参加作品


彼から言われた。

「君のその長い髪が好きだ」

その言葉が、なぜか胸に引っかかった。
私の長い髪だけが好きなんじゃないか――そんな思いがよぎる。

気づけば私は、美容院のドアを開けていた。

「今日はどのようにしましょう?」

なじみの店長が、いつもの笑顔で聞いてくる。

「ショートどうだ!?」

「え、ショートにされるのですか?」

「そう。気が変わらないうちに、思いっきり」

「本当にいいのですね」

「いいって言ってるじゃない」

「では、そのようにさせていただきます」

ハサミが入る。

ジャリ、ジャリ――

その音が、やけに大きく響く。

もう、こうなったら覚悟を決めて。
そう思うのに、心臓はばくばくと鳴り続けていた。

そのとき、スマホが震える。

――彼からのLINEだ。

「今日、カラオケに行かない?」

え、もうバレるの?
まだ何も見ていないはずなのに、不安がよぎる。

画面を見つめる私の肩に、
切られた長い髪が、はらり、はらりと落ちていく。

いつか知られる。
なら、今でもいい。

「いいよ。いつものとこで19時ね」

すぐに既読がつき、ハートのスタンプが返ってきた。
その小さなマークが、胸をチクリと刺す。

美容院を出て、待ち合わせ場所へ向かう。

夕方の空は、ゆっくりと夜に溶けていくところだった。

しばらくして、彼が走ってやってきた。

「あれ、今日は感じが違うね」

一瞬、息をのむ。

「すごく似合ってるよ。短い髪の君も好きだよ」

――その言葉を、待っていた。

頬が少し熱くなる。

私は小さく笑って、彼の手を取った。

夜の街へ、ふたりの影がゆっくりと伸びていく。


イラスト:ChatGPT

アマノ文筆クラブのお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。


いいなと思ったら応援しよう!

片桐 みかん よろしければ応援お願いします😊これからも続けていく”未来の種”になります。よろしくお願いします。(❁´◡`❁)