僕じゃないよ
毎週ショートショートnoteの企画参加作品
まえがき
満員電車という場所は、
ときに、本人の意思とは関係なく、
誰かを「加害者」にも「被害者」にもしてしまいます。
今回のお題は「置換撲滅」。
言葉を置き換える話ではなく、
立場や視線が、いつの間にか置き換わってしまう怖さを
短い物語にしてみました。
僕じゃないよ
満員電車が急停車した。
僕は隣の女性に急接近してしまった。
僕の意志とは関係ない。
けれど女性は、僕をすごい目でにらんだ。
恐ろしくて、僕は目をそらした。
体勢を整え、僕は女性から離れた場所へ移動した。
次に急停車してもいいように、
もう女性のそばはやめておこう。
そう思い、周りを見渡した。
……女性ばかり。
なんで、こんなに女性ばかりなんや。
僕は目を閉じた。
全員が女性で、男は僕だけ。
そんなこと、ありえない。
女性専用車両でない限り……。
まさか。
これが、あの「置換撲滅」の車両?
僕は次の駅で、急いで降りた。
遅刻しても、僕の人生に大差はない。
あのまま乗り続けていたら、
次の急停車で、
また冷たい視線を浴び続けただろう。
僕は、次の電車に乗った。
LINEで「少し遅れます」と打つ。
顔を上げると――
なぜか、また女性ばかり。
まさか。
また、僕は……。(359字)

あとがき
誰が悪いのか、
誰のせいなのか。
そう簡単に割り切れない場面が、
日常の中にはたくさんあります。
意図しない出来事が、
一瞬で立場を置き換えてしまうこともある。
この物語の違和感が、
読む方それぞれの中で、
何か小さな引っかかりとして残れば嬉しいです。
※この物語はフィクションです。
毎週ショートショートnoteのお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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