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雪の日の托鉢

毎週ショートショートnoteの企画参加作品

まえがき

雪の日は、音が少なくなる。
人の心の声が、少しだけ聞こえやすくなる。
そんな日に、村を歩く和尚の話です。


雪の日のお誘い

古寺の和尚は、雪の降る日に托鉢に出かけた。

ありがたいお経を唱えれば、
ご飯を少し分けてもらえるやろう。
そう思い、雪を踏みしめながら、村を歩く。

一軒目の家の玄関先で、
和尚は静かにお経を唱えた。

すると、おばあさんが戸を開け、
ゆで上げたとうもろこしを二本、手渡してくれた。

これは、ありがたい。

和尚は、おばあさんの腰に向かって、
もう一度、ありがたいお経を唱えた。

すると、
曲がっていた腰が、すっと伸び、
おばあさんは不思議そうな顔をしながら、
家の中へと入っていった。

次の家の前でも、
和尚はお経を唱えた。

ところが、家の中が騒がしい。
どうやら、夫婦げんかをしているらしい。

巻き込まれたら大変や、と
立ち去ろうとしたその時、
夫婦に呼び止められた。

二人は、それぞれの主張を、
和尚に向かって話し始めた。

和尚は、少し考えてから、
一言だけ、こう言った。

「相手の、ええところを思い出されよ。」

夫婦は顔を見合わせ、
しばらく黙り込んだ。

やがて、二人は小さくうなずき、
また仲睦まじく、家の中へと戻っていった。

和尚は、
「夫婦げんかは犬も食わん…」
と、小さくつぶやいた。

何軒かを回り、
なんとか一日の食べるものを集め、
和尚は古寺へと帰った。

それからしばらくして、
和尚の名は
「雪和尚」
という名で、村から村へと広がっていった。

雪和尚に経を読んでもらえば、
無病息災。

噂が噂を呼び、
雪和尚は引っ張りだこになった。

それでも雪和尚は、
余分な金銭は受け取らず、
今も変わらず、
寒い古寺から、托鉢に出かけている。

イラスト:ChatGPT

あとがき

雪の日は、
人の心が、少しやわらぐ。

ありがたい言葉は、
大きな奇跡やなく、
日々の暮らしの中に、
静かに降り積もるものかもしれません。
※この物語はフィクションです。

毎週ショートショートnoteのお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。


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