記憶の中に
シロクマ文芸部の企画参加作品
レシートに、ある金額の記憶がない。
いくら思い出そうとしても、思い出せない。
1986年4月20日。
私は何を買ったのだろう。
……いや、古すぎる。
思い出せないのは当たり前だ。
この頃の私は、働き始めたばかり。
きっと、緊張の毎日を過ごしていたのだろう。
1996年4月20日。
私は何を買ったのだろう。
うーん、やっぱり思い出せない。
思い出せたら、天才かもしれない。
この頃は、結婚して、慣れない料理に奮闘していたはずだ。
2006年4月20日。
私は何を買ったのだろう。
……もう、思い出すのはやめよう。
この頃は、子育てに空回りしていた気がする。
2016年4月20日。
私は何を買ったのだろう。
思い出巡りになってきた。
この頃、仕事を頑張っていた。
まだ自分が何者かわからず、ただ日々を生きていた――そんな気がする。
そして、2026年4月20日。
私は何を買うのだろう。
たぶん、手抜きの惣菜を買うのは確定だ。
でも、それでいい。
noteに記事を書くのが日課になって、
書くことが楽しくて、
浮かぶ言葉に出会える幸せを、ちゃんと感じている。
レシートに残るのは、金額や品物だけじゃない。
そこには、思い出せない日々と、
確かに生きてきた時間が、静かに刻まれている。

シロクマ文芸部のお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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