おてあげですね
アマノ文筆クラブの企画参加作品
まえがき
冷蔵庫は、便利な家電のはずなのに。
ときどき、開けるのが少し怖くなる瞬間があります。
本文
あ、冷蔵庫の中に、きゅうりがあったはず。
野菜室を開けて、きゅうりを探す。
……どこにもない。
あったのは、きゅうりらしき代物。
たぶん、1週間前は、きゅうりだったはずだ。
もう、おてあげですね。
ここまで進化したら、しょうがない。
大根に、代役を頼もう。
大根は、かろうじて瀕死の状態で救い出された。
人参とともに酢の物へと姿を変え、
食卓に、なんとか色を添えた。
次の日。
肉じゃがを作ろうと、また野菜室を開ける。
いつもストックしてあるじゃがいもは、
野菜室ですくすく育ち、芽を出していた。
これは、もう、おてあげですね。
一体この冷蔵庫は、墓場なのか。
それとも、霊安室なのか。
野菜たちの悲痛な叫びは、
今日もまた、繰り返されるのでした。

あとがき
見て見ぬふりをした結果は、
だいたい冷蔵庫の中に表れます。
今日こそは、野菜たちの声に耳を傾けよう。
…そう思いながら、また扉を閉めるのです。
アマノ文筆クラブのお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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