陸と小百合の物語
🍊第44回 3つのお題(昭和へタイムスリップ)
🎈お題①:「赤い自転車と坂道の約束」
🐾お題②:「チャイムがなるまでの時間」
⏳お題③:「風鈴の音と夏の記憶」
お題④イラストから空想した世界を書いて下さい。
陸と小百合の物語
赤い自転車と坂道の約束
陸と小百合は幼なじみ。
「金魚の糞だな」なんてクラスメートにからかわれても、
ふたりはいつも一緒にいた。
「お前ら、将来結婚するんじゃねーか。
あ、もうしてるか。」
悪ガキにそう言われると、陸は決まって言い返した。
「僕の許嫁にちょっかいを出すやつは、僕がお相手しよう。」
その一言で、悪ガキたちは蜘蛛の子を散らすように去っていく。
「陸、あんなの無視すればいいのに。私、平気よ」
「ああ、わかってるさ。お前が強いのはな」
小百合はくすっと笑った。
「ねぇ、あの赤い自転車で坂道まで登らない?」
「え、また?けっこうきついんだぜ」
「あら、じゃあ私が陸を後ろに乗せようか?」
「そんなことしたら、一生尻に敷かれちまう」
ふたりは笑いながら、夕焼けを背に坂道を登っていく。
赤い自転車のペダルを踏みしめながら。
「ねぇ、私たち、ずっと一緒だよね」
「ああ、ずっと一緒だ」
「約束だよ」
「ああ、約束するよ」

チャイムが鳴るまでの時間
「ねぇ陸、今日出さないといけない書類、家に忘れてきちゃった。
先生に怒られる……」
「僕が取りに行ってくるよ」
「でも、チャイムが鳴るまでに間に合う?」
「ああ、まかせとけ」
そう言うと、陸は裏庭から飛び出していった。
どうしよう。陸、大丈夫かな。
いつも助けてくれるけど、もし何かあったら――
校舎の大きな時計が、残り五分を指していた。
「陸……」
そうつぶやいた、その時。
振り向くと、息を切らした陸が立っていた。
「これだろ」
封筒を差し出されて、思わず涙がこぼれる。
「小百合、急がないとチャイムが鳴るぞ」
「うん」
陸は小百合の手を握り、走り出した。
その手のぬくもりを、小百合は確かに感じていた。

風鈴の音と夏の記憶
僕らは、親の仕事の都合で離れ離れになった。
最初の頃は手紙のやりとりをしていたけれど、
いつしかそれも途絶え、思い出は遠くへと消えていった。
風鈴の音が、ふと夏の記憶を呼び起こす。
僕は久しぶりに、小百合へ手紙を書いた。
けれど二週間後、
それは差出人不明のまま戻ってきた。
どうしても気になって、
小百合が住んでいた町へ向かった。
そこには、あの約束の坂道が、あの日のまま残っていた。
ふと目に入る、赤い自転車。
誰のものだろう――
「あ、陸じゃない?」
振り返ると、そこには綺麗になった小百合が立っていた。
「小百合、この町にいたの?僕、手紙出したんだ」
「うん。でも、今はここには住んでいないの」
「じゃあ、どうしてここに?」
小百合は少し照れながら、笑った。
「陸に、いつか会えそうな気がしたから」
僕は、思わず笑ってしまった。
「僕の許嫁さん、坂道の約束、忘れてないよ」
小百合は嬉しそうに、僕を見つめた。
風が吹き、風鈴の音が遠くで鳴った。
僕らは、ここからまた始まる。

🍊あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回のお話は、「3つのお題に空想のひらめきを」から生まれた物語です。
赤い自転車、坂道の約束、
そしてチャイムが鳴るまでの時間。
どれも、どこか懐かしくて、
心の奥にそっと残っているような風景でした。
書いているうちに、陸と小百合は、
まるで昔から知っているふたりのように、
自然と動き出してくれました。
幼い頃の約束は、時が経つにつれて
忘れてしまうこともあります。
それでも、ふとした瞬間に思い出し、
また繋がることもあるのかもしれません。
風鈴の音にのせてよみがえる夏の記憶が、
読んでくださった方の中にも、
そっと響いてくれたら嬉しいです。
今回も、物語の世界をより鮮やかにしてくれたイラストに、
心から感謝しています。
また次の空想のひらめきで、
お会いできたら嬉しいです。
片桐みかん🍊
※本作品はフィクションであり、登場人物・団体等はすべて架空のものです。
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