歩き始めた名前
風まかせ文芸部の企画参加作品
私は、いくつもの名前を行き来している。
いや、三つ、かな。
生まれたときの名前。
結婚したときの名前。
そして、皆さんが知っている――片桐みかん。
その三つの名前を、少しだけ紐解いてみようと思う。
生まれたときの名前の由来を、物心ついた頃、母に聞いたことがある。
母の妹の友だちに、とても素敵な人がいて、その人の名前からつけたのだと教えてくれた。
それを聞いたときの私は、
「ふーん、そうなんだ」
と、どこか他人事のように受け止めていた。
私は、その“素敵な人”のようになれただろうか――
ふと、そんなことを思う。
結婚して、苗字が変わった。
最初は、どこか借り物のような、不思議な感覚だった。
けれど、年月を重ねるうちに、
気がつけば今の苗字のほうが、しっくりくるようになっていた。
仕事では、それなりに。
家庭でも、それなりに。
そうやって、この名前と一緒に生きてきたのだと思う。
そして――片桐みかん。
この名前は、いつ生まれたのだろう。
自分でも、はっきりとは覚えていない。
ただ、ひとつだけ言えるのは、
ある日突然、浮かんできた名前だということ。
片桐がどこから来たのか。
なぜ、みかんなのか。
まったく見当もつかない。
きっと、あの“ピコン星人”の仕業だろう。
片桐みかんとして、いろいろな場所で文章を書いてきた。
本名ではないからこそ、
自由に、自分の世界を表現できる。
その心地よさを、私は知っている。
名前は、ただ呼ばれるためのものではなくて、
自分を少しだけ解き放ってくれるものなのかもしれない。
これからも――
片桐みかんとして、歩いていく。
ピコン星人と一緒に。

風まかせ文芸部のお題に書かせて頂きました。
iさん、お題をありがとうございます。
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