やさしい嘘の結末
🍊第44回 3つのお題(日本むかし話)
🎈お題①:「狐火が導く帰り道」
🐾お題②:「春を探しにきた鬼」
⏳お題③:「やさしい噓の結末」
お題④イラストから空想した世界を書いて下さい。
やさしい嘘の結末
「おばあちゃん、あの話を聞かせて」
「おやおや、また聞くのかい」
「うん」
おばあちゃんは、小雪に語り始めました。
むかし、あるところに、貧しい村がありました。
争いが絶えず、人々の暮らしは苦しいまま。
そこから抜け出せずにいたのです。
ある日、働き者の若い男の子が、村を出て働きに行きました。
隣の村は、豊かな作物にあふれ、
人々の暮らしも穏やかでした。
どうしてこんなにも違うのか――
男の子は不思議に思いながら、一生懸命働きました。
やがて、まとまったお金を手にし、
あの貧しい村へ戻ることにしたのです。
けれど――
どれだけ歩いても、村にたどり着きません。
困っていると、一匹の狐が現れ、道を案内してくれました。
狐火が導く帰り道は、青く光り、
男の子の胸には不安が広がります。

やっとたどり着いた村は、
かつての姿とはまるで違っていました。
屍が転がり、悪臭が立ちこめる。
そして、村人たちは――
男の子を取り囲み、持ち物を奪おうとしました。
命さえも奪われそうになった、その時。
ひとりの鬼が現れ、村人たちは逃げ去りました。
助かった男の子に、鬼が言いました。
「助けてやったんだ。礼をもらわないとな」
「おいらはもう何も持っていません。
命なら、どうぞ差し上げます」
「命はいらねぇよ」
鬼はそう言って、続けました。
「俺はな、春を探しに来たんだ。
春を見つけてくれたら、礼をするぜ」
男の子は、とっさに言いました。
「桜の木がたくさんある場所を知っています。
でも……思い出せないんです」
それは、嘘でした。
「そうか。じゃあ一緒に探しに行くか」

ふたりは、春を探す旅に出ました。
季節はまだ、春には遠く。
それでも鬼は、文句ひとつ言わず、
男の子と共に歩き続けました。
大きな身体をした鬼でしたが、
その目は、とてもやさしかったのです。
気がつけば、男の子は青年になっていました。
それでも春は、見つかりません。
そして、ついに――
青年は鬼に告げました。
「あの場所は……ありません。
あれは、嘘だったんです」
「ねぇ、おばあちゃん。その先は?」
小雪が尋ねました。
「その先かい?」
おばあちゃんは、少しだけ目を細めて言いました。
「おばあちゃんの知っている話は、ここまでなんだよ」
あなたなら、
やさしい嘘の結末を、どう結びますか?

🍊あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回のお話は、「3つのお題に空想のひらめきを」から生まれた、少し不思議で、少し考えさせられる物語になりました。
「やさしい嘘」
それは、人を守るための嘘なのか。
それとも、自分を守るための嘘なのか。
書きながら、はっきりとした答えは出ませんでした。
ただ、鬼とともに春を探し続けた時間は、
嘘から始まったものだったとしても、
決して無意味なものではなかったのではないか――
そんな気がしています。
そして、あえて結末を描かず、
読む方それぞれの中で、この物語を完成させてもらえたらと思いました。
あなたなら、この「やさしい嘘」に、どんな結末をつけますか。
今回も、物語の世界を広げてくれたイラストに、心から感謝しています。
また次の空想のひらめきで、お会いできたら嬉しいです。
片桐みかん🍊
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