アマノ文筆クラブ「媚びると重苦」
タイトル:媚びる重苦
嫌いなヤツがいる。
それでも私は、社会人としての処世術とやらを身につけた。
今では、顔で笑い、心で毒を吐く。
そんな生活を続けている。
この間、その毒が、心の中のつもりで吐いたはずなのに、
口をついて出てしまった。
慌ててごまかしたが、冷や汗が背中を流れた。
媚びるなんて、性格上、最も嫌いな手法のひとつだ。
けれど、嫌いな人の多い社会で生き残るには、
媚びたように振る舞うしかない。
叱責されれば、とりあえず謝罪の言葉を口にする。
相手の気持ちが落ち着いた頃、
私は心の中で、そっと毒を吐く。
――聞こえないように。
この「媚びる」が積み重なると、
心は重く沈み、やがて身体に異常が出る。
耳鳴りが止まらない。
心臓が、やけに騒がしい。
それでも私は、人生の折り返しを過ぎ、まだ踏ん張っている。
まだ、媚びないといけないのか。
――そうだ。
働いている以上、媚びることから逃れることはできない。
媚びている人を見ると、
「あそこまで自分を下げたくない」と思う自分がいる。
けれど、他人から見れば、
私はどう映っているのだろうか。
媚びないと生きていけない社会が悪いのか。
媚びることを受け入れたほうが、生きやすいのか。
答えは出ないまま、
私の辞書から「媚びる」という言葉が消えることはない。
媚びると重苦の生活は、これからも続いていく。
吐き出したはずの毒は、消えることなく、
静かに、私の周りに渦巻いている。
アマノ文筆クラブのお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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