「7月32日限定スイーツ」
風まかせ文芸部の企画参加作品
「今度、『7月32日』という企画を考えている。それを君に任せたい。」
部長に突然名指しされた私は、嬉しさと戸惑いが入り混じった気持ちになった。
7月32日?
企画の名前からして不思議だ。
「私に何をすればいいの?」
しかも締め切りは明後日。
「これは、きっと何人もの人のところを回って、最後に私へ来た案件なんだろうな。」
そう思いながらも、心のどこかでわくわくしていた。
この企画を成功させることができたら、もっと大きな仕事を任せてもらえるかもしれない。
私は資料を集め、何度も企画書を書き直した。
そして、一つのアイデアがひらめいた。
「7月32日限定スイーツ」の販売。
誰もが「7月32日って、いつ?」と思う。
だからこそ、7月31日と8月1日の間にある、一年でたった一度だけ現れる「幻の一日」という設定にする。
その日だけしか買えない限定スイーツ。
名前は**「7月32日のレモンケーキ」**。
甘酸っぱいレモンクリームに、青空を思わせるゼリーを重ね、ひと口食べると「もう一日だけ夏休みが続いたらいいな」と思える、そんな気持ちを閉じ込めたスイーツだ。
私はすぐに商品開発の担当へ相談し、販売担当にはチラシの制作を依頼した。
それぞれの部署へ企画を説明し、準備を進めていく。
「あとは部長に許可をもらうだけ。」
そう思うと、少し緊張してきた。
翌朝、企画書を持って部長のところへ向かった。
部長はページをめくりながら、じっくりと目を通している。
しばらくして顔を上げると、こう言った。
「この短期間で、本当に準備できるのか?」
「はい。もう手配は済んでいます。」
部長は少し驚いた表情を浮かべ、それから静かにうなずいた。
「よし、やってみなさい。全面的に協力する。」
そして、少し笑いながら続けた。
「実はこの企画、何人もの人に頼んだんだ。でも、どれも決め手に欠けてね。最後に君ならと思って任せてみた。」
私は部長に気づかれないよう、小さくガッツポーズをした。
迎えた「7月32日」。
開店前から限定スイーツを求める長い行列ができていた。
「今日は7月32日なんですよね。」
「一年に一日だけなんて、素敵!」
そんな声があちらこちらから聞こえてくる。
用意したスイーツは、あっという間に完売した。
「もう一度販売してください。」
「来年も絶対にやってください。」
再販を望む声は日に日に大きくなり、「7月32日のレモンケーキ」はデパートを代表する人気企画へと成長していった。
後日、部長は笑顔で言った。
「よくやってくれた。」
その一言が、何より嬉しかった。
それから私は、新しい企画を考える部署へ異動になり、毎日わくわくしながら働いている。
次は、どんな「存在しない日」を、本当にある日のようにみんなへ届けようかな。
そんなことを考えながら、私は今日も新しい企画書を開いている。

風まかせ文芸部のお題に書かせて頂きました。
iさん、お題をありがとうございます。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします😊これからも続けていく”未来の種”になります。よろしくお願いします。(❁´◡`❁)