「私の精神崩壊と再生の記録~”壊れていく日々”から”取り戻す日々”へ
こんにちは、みはCOMです。
今日は、私の精神が壊れていった日々と、
その再生していくまでを綴りたいと思います。
これにより、私もそうだとか、
今苦しんでいる方への応援になればと思っています。
日常でストレスの多い時代です。
何卒皆様もご自愛頂きますよう心より祈っております。
第一回 忍び寄る崩壊 出張の日々
目覚まし代わりのアラームが鳴り響く。AM4時半。
眠い目をこすりながら、私はベッドを後にした。
見慣れた、殺風景なワンルーム。
今日もまた早朝に飛び起き、無意識のように身支度を整える。
AM6時には空港に着かなくてはいけない。
月曜の朝は、いつもこんな調子だった。
手慣れた作業をこなしながら、スーツに腕を通す。
ふと、溜息が漏れる。
スーツを着ると、意識が切り替わる。
まるで“戦闘服”のようだ。
身も心も、鎧をまとって空港に向かう。
そうでもしなければ、この日々を乗り切れなかった。
自分の心をどうにか奮い立たせながら、
タクシーの中では、プレゼン資料に目を通す。
これも、すっかり見慣れた光景。慣れた手順。
やがて、始発の飛行機に乗り込む。
始発便は、いつも混んでいる。
こんな光景、あなたにも見覚えがあるかもしれません。
月曜の朝、スーツ姿の人たちが無言のまま並ぶ空港。
まるで監獄に向かう輸送車のように、押し黙って座席に並んでいる。
肩と肩が触れ合う、窮屈なエコノミー。
それでも、誰ひとりとして声を上げない。
私もまた、当たり前のようにそこにいた。
「こんなことで、摩耗するはずがない」
そう思い込んでいた。
けれど今思えば、
あの頃の私はもう、心も体もじわじわと削れていたのだと思う。
移動時間だけが、自分と向き合わなくて済む貴重な時間だった。
目を閉じて、これから始まる慌ただしい日々に、無心で備える。
毎週、始発の飛行機に乗り、週末は最終便で帰る。
これが、10年以上続いた私の日課だった。
現地に着くと、最寄りの営業所へと急ぐ。
バスや地下鉄を乗り継ぎ、キャリーバッグを転がして、足早に向かう。
携帯のナビと時刻表を見比べながら。
9時までに営業所に到着しなければならない。
キャリーバッグの車輪が、たまに引っかかる。
通勤ラッシュの波の中、迷惑そうに見られながら、
「すいません、降ります」
そう声をかけながら、キャリーを引きずって下車する。
ときには、見知らぬおじさんに舌打ちされたこともあった。
不機嫌そうな顔。
それさえ、次第に気にならなくなっていった。
「これが日常なんだ」
そう自分に言い聞かせながら、心を遠ざけていたのだと思う。
でも本当は、
心の感覚が、鈍っていただけかもしれない。
景色は、どこか他人事のように流れていく。
通勤電車の車窓。街の看板。すれ違う人の顔。
すべてが、“薄い膜”の向こうにあるように見えた。
今にして思えば、私は心の摩耗に気づかないよう、
意図的に「鈍さ」というフィルターをかけていたのかもしれない。
営業所に着くと、そのまま現地スタッフと合流して営業に出る。
アポイントを取ったお客様のもとへ向かい、商材をプレゼンする。
大口顧客になるほど、その場での商談成立は難しい。
だからこそ、毎回が真剣勝負だった。
相手の表情、しぐさ、言葉。
そのひとつひとつに、神経を尖らせる。
口の中が乾き、手のひらがじっとりと汗ばむ。
私は、まるで狩人のように息をひそめながら、
獲物の出方を伺うように、相手の反応を探る。
笑顔を崩さず、背筋に走る緊張とたたかいながら。
「ここで決めなければ」
「何としても、商談を次につなげなければ」
そんな焦りが、胃の奥をぎゅっと締めつけていく。
追い打ちをかけるように、上司が吠える声が響く。
「必ず売ってこい!」
その声が、耳の奥で何度も反芻される。
一日中、時間の許す限りお客様をまわる。
ときには、新規のお店に飛び込むこともある。
耳の奥ではまた、あの声が響く。
「お前が行って、結果ゼロとは何事か。」
当たり障りなく断ろうとするお客様に、
食らいつくように粘る。
けれど、お客様の声は心の表面をただ撫でて、通り過ぎていく。
私は笑顔で応えながらも、どこか現実と切り離された世界にいた。
すべての予定が終わり、ホテルに戻る頃には、
心も体も棒のようだった。
もう何も感じたくなかった。
すっかり摩耗し、硬く、冷たく、カチカチに固まっていた。
夕食は、コンビニで適当に選ぶ。
日本全国、どこに行っても変わらない弁当やお惣菜。
時折、ご当地メニューがあるくらいだ。
PM9時を過ぎれば、選べる弁当も限られてくる。
サラダと飲み物を添えて、レジへと向かう。
並ぶ人々の背中はどれも同じに見えて、
まるで工場のラインのように、
出口へと無機質に吐き出されていく。
その様子を、私はスローモーションのように眺めていた。
色あせた世界が、音もなく過ぎていく。
ホテルまでの道を、キャリーを引きながら歩く。
「あともう少し……」
心の中でそう念じながら、気持ちは地面を這うようだった。
フロントでは、形式的な対応と、張りついたような笑顔。
言葉少なにチェックインを済ませる。
部屋に入ると、温めた弁当をスーツのままかき込む。
味も、風景も、どこでも一緒だ。
無機質な味を、ただ胃まで流し込むだけ。
食べ終わると、乱暴にスーツを脱ぎ捨てる。
熱いシャワーを浴びる。
頭から湯をかぶると、血が再び体に流れ出すような感覚になる。
熱気とともに、固まった思考が少しずつ溶けていく。
湯気のなかで、ようやくこわばりがほどけていく。
一息ついて、疲れ切った体をベッドに投げ出す。
うとうとしながら、慌てて目覚ましをセットする。
AM5時起床。6時にはホテルを出なければ間に合わない。
翌朝7時半には、営業所に到着していなければならない。
こうして、目まぐるしい一日が、ようやく幕を下ろす。
年間240日の出張。
月末・月初の会議を除けば、そのほとんどを出張で過ごす。
手慣れた日常が、次から次へと過ぎ去っていく。
出張も、いつの間にか“作業”になっていた。
感情を挟まず、こなすだけの反復。
色あせた日常が、走馬灯のように目の前を過ぎていく。
色のない万華鏡が、ただ静かに回り続けているようだった。
そして私は、その万華鏡を、どこか他人事のように眺めていた。
そのことに疑問すら抱かず、当たり前のように受け入れていた。
自分が摩耗していることにも、気づかないままで。
でも、
実のところ、出張しているときの方が、まだましだったのだ。
事務所にいる時こそ、多大なストレスで神経をすり減らしていた。
日々の業務に苛立ち、心に憤りを抱えながら。
それすらも、無機質にやり過ごそうとしていたのだけれど。
そう、あの頃の私は、
「本当に壊れていく」ということの意味を、
まだ、知らなかった。
(つづく)
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