スコープの先に、未来が見えるよ #マスクドnote2 _17

「その穴から何が見えるの?」
そう聞くとお父さんは「未来の自分だよ」と言って笑った。
私はその言葉を忘れなかった。
これは昔々の少し不思議な私のお話。
よかったらお付き合いください。
◇
私は背がとっても低かった。
学校は背の順で並ぶので私はいっつもいちばん前だ。
前ならえは両手を腰に。
前の人の背中に手を伸ばす前ならえ、いつかやってみたいって思ったっけな。
小学生の私には、もうひとつやってみたいことがあったんだ。
昔の玄関って知ってる?
今はさ、インターホンがモニター付きで、ピンポーンて鳴るとモニターにお客さんが映るでしょ?
昔はモニター付きインターホンなんてなかったんだよ。
じゃあ、どうやって誰が来たか分かるのかって?
なんとなんと、のぞき穴が玄関に付いていたのでーす!
ちゃんとした名前はドアスコープ。
玄関に付いたドアスコープから外を見ることが出来たんだ。しかも広角レンズ。ドアスコープから外を見ると、小さい穴からすっごい大きく外が広がって見える、らしい。
らしい…
そうそう、背がちっちゃい私は、背伸びしてもドアスコープに届かなかったんだ。だから、背が伸びたら真っ先にやりたいことが、ドアスコープから外を見ること。
どんな風に見えるのかなぁ。
わくわくしながら背が伸びるのを待ちました。
◇
私の成長スパートは小学校6年生の時にやってきた。
数カ月で6センチも伸びて、ついに目線が玄関のスコープに届くようになったのです!
この小さな穴を覗き込んだら未来が見えるのかぁ。
少しどきどきするなぁ。
どれくらい先の未来が見えるんだろう。
ようやくドアスコープに背が届いたのに、私はちょっと緊張しちゃって何日か覗くのをためらっちゃった。
でも、ある日、いよいよドアスコープから未来を見ることにしました。
ふぅ。
大きく息を吐いて、呼吸を整えて、スコープの穴に視線を合わせて一度目をつむる。
私の未来。
目を開けてみる。
ドアスコープのレンズに、夏服の制服を着て歩く高校生の私が映っている。
わぁ…
わたしも高校生になるのかぁ。
ちょっと安心して、涙も出ちゃって、なんだかとってもとっても嬉しかったなぁ。
◇
なーんて昔話でした!
懐かしいなぁ。何だか高校生の頃、思い出しちゃった。
あ、お母さんの声が聞こえる。
「ほら!!お弁当ちゃんと持った?」
「持った持った!行ってきまーす!!」
ローファーの靴を鳴らして、玄関の扉を開けて、初夏の光の中へ、私は踏み出していく。
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