見出し画像

【ショート】百均オタクの哀れな末路

今日も『ヒルナノデス!』の収録がある。

100均オタクの主婦"セリアンヌ"のマストバイコーナーは主婦層に人気で、こうして月に1度のペースで収録に呼び出されている。


ヒルナノデス!より

私がセリアンヌとして活動し始めてもう3年が経つ。

初めは無名のYouTuberだった。
大好きな100円ショップのオススメ商品を紹介しているうちに人気が出て、ついに地上波に出るほどになった。

……とはいえ。
月に1度の収録のために毎日のようにセリア・ダイソー・キャンドゥ・ワッツをはしごする毎日に近頃は嫌気がさしてきた。大したギャラをもらえるわけでもないし、正直言ってもう辞めたい。


何度か「もう辞めたい」と出演をお断りさせてもらっているのに、プロデューサーは「どうかやめないでください!セリアンヌさんが紹介してくれた商品は翌週爆売れするんです……!!」と縋りついて、私を離さない。


それならば、と私はとある作戦を立てた。
『売れないものを紹介すればいいんだ』
そうしたら人気が無くなって、このマストバイコーナーもなくなるに違いない。

翌週、さっそく私は「誰がこんなもん買うねん」というものをマストバイとして紹介した。


今日ご紹介するのはコチラ♬
空気しか入っていないポテチです!!』
……これで降板間違いなし。収録を終えた私はほくそ笑んだ。


ヒルナノデス!放送後、さっそくプロデューサーからの電話が鳴った。


「セリアンヌさん!!!大変です!!!空気しか入っていないポテチが爆売れです!!なんでも、ダイエット中なのにポテチが我慢できない人たちの購買意欲を満たす上に、香りで楽しませてくれて、痩せられると口コミで広がりまして……!!さすがです!セリアンヌさん!!」

プロデューサーは興奮した様子で私に告げた。

なんですって……?空気しか入っていないポテチに110円払うってこと……!?信じられない気持ちでプロデューサーの電話を切った。

もっと、もっと無駄な物、誰にも必要とされないものを紹介しなくちゃならない!!!私は数々の100円ショップをくまなく回った。



そして翌月。

今日ご紹介するのはコチラ♬
『速攻破けるストッキングです!!』

こ れ は 絶 対 売 れ な い……!!
今日が最後の収録のはずだ。間違いない。私はプロデューサーの顔を見ながら、心の中で(今までありがとうございました)と頭を下げた。


ヒルナノデス!放送後、さっそくプロデューサーからの電話が鳴った。


「セリアンヌさん!!!大変です!!!速攻破けるストッキングが爆売れです!!


「……冗談でしょ?誰がそんなもの買うのよ?」


「なんでも、ストッキングを破きたい一部の界隈の方に大人気で!!そちらの界隈の方が買い占めているそうです!!さすがです!セリアンヌさん!!」

プロデューサーは興奮した様子で私に告げた。



「何その界隈。」


それならば。
私、ことセリアンヌは立ち上がった。

第5の100円ショップ。
セリアンヌ株式会社を立ち上げる。もうただの主婦じゃない。テレビ局の安いギャラなんていらない。私が宣伝すれば爆売れするんだから、セリアンヌは社長になるのよ。


親戚や友人から資金を集め、総額1億円を投じて100円ショップセリアンヌはオープンした。

目玉商品は開発費1千万円をかけた
『一瞬でじゃがいもの皮がむけるピーラー』
世の中の料理好き・じゃがいも好きが報われるはずだ。私が人々を救う。誰かを助けるのだ。


当然、ヒルナノデス!でもその日、100円ショップセリアンヌの特集を組んでもらい、『一瞬でじゃがいもの皮がむけるピーラー』を大々的に宣伝した。

これで私もセレブの仲間入り。
億ションに住んで悠々自適に暮らすのよ。


ヒルナノデス!放送後、さっそくプロデューサーからの電話が鳴った。


「セリアンヌさん!!!大変です!!!一瞬でじゃがいもの皮がむけるピーラーが全く売れません!!


電話から聞こえてきたウソみたいな言葉に、私は言葉を失った。
「ど……どうしてよ?人々の役に立つ、そんな商品のはずでしょ?」

「そうなんですが……あの、とにかく視聴者の声やネットで書かれていることなどまとめてメールしますから、ご確認くださいね!」

【一瞬でじゃがいもの皮がむけるピーラー】
・とかいって剥けないんでしょ?
・なんかフツー
・どこにでもありそう
・セリアンヌさんらしくない
・ただ便利なだけ
・おもしろくない
・ワクワクしない
・もっとアホみたいな商品がよかった

そんな。
信じられない。

便利なものが欲しいんじゃなかったの……?

人々を救うなんてたいそうな事を言っている私が生み出した商品はただの奢りで、そんなものは誰も求めていなかった。

過去に私が紹介した、誰がそんなもん買うねんな商品こそ。なんの役にも立たないと思っていた商品こそ。誰かにとっては心から求めているものなのかもしれない。

私は、間違っていたのかもしれないーーー







ましゃこさんの【百均オタクの哀れな末路】を書かせていただきました!

普段エッセイを書いてばかりなので創作には自信がないのですが、マイトンさんのこの記事を読んでどうしても挑戦してたくなりました!拙い文章をお読みいただきありがとうございました。


ショートショートや小説はあれですね、オチが難しいですね。どう終わらせようか悩みました。

ボツネタ募集は明日10日までです!


いいなと思ったら応援しよう!

本田すのう 本田すのうは皆様からのご支援で活動を続けています。