「佐藤忠男、映画の旅」
ドキュメンタリー映画「佐藤忠男、映画の旅」を見ました。今村昌平の後を受けて学長を務めた日本映画学校(現大学)の教え子である寺崎みずほが2019年から亡くなる22年まで、取材と撮影のため密着したという。学校に関係した映画製作者や脚本家ら、さらに同世代の映画評論家、秦早穗子が証言。佐藤が晩年、アジア映画の紹介に努めたことからイム・グォンテク、シャージ・N・カルンらも思い出を語る。

著書は150冊超。国鉄労働者だった佐藤はキネ旬などへの投稿から始め、雑誌編集者となり、書くことが好きで、著書を次々出すに至ったわけで、大学文学部、大学院で文学批評や美術批評の理論を学んだ、私もそうなのだが、飯島正のような書き手とはアプローチも方法も違う。佐藤の言うところの「好き」が批評の核になっているので、さまざまな方法で批評する人たちとの違いは明らか。それでその「好き」がアジア映画に向かったことが、この映画からよく分かる。
佐藤が「好きな映画は?」と問われると、普通には、誰もが納得する「東京物語」と答えておくと言うが、映画好きには、それとともにそれと同じくらい素晴らしい映画としてインド映画「魔法使いのおじいさん」(1979年、ゴーヴィンダン・アラヴィンダン監督)の名を挙げるのだと佐藤。それが製作されたケララ州へと旅立つし、映画も同じようにそのロケ地へと向かうことになる。映画に登場する子どもたちが歌う民謡(?)が印象深く、年月が過ぎて見つけ出した、中年男女になった彼ら彼女らが同じ歌を歌って映画は幕を閉じる、その同調ぶりが師匠へのシンパシーを、多人数で歌う歌の素朴な同調ぶりと共鳴して感じ取れる。
