金麦のCMを彷彿とさせる『冬のなんかさ、春のなんかね』
杉咲花主演の『冬のなんかさ、春のなんかね』にハマっている。毎週、今彼と元カレが登場するのも面白いし、倫理観が破綻していることに気が付きながら、でも傷つかないように生きている生命力に驚きもする。
物語の進行がゆったりで、セリフも間合いがあるので、疲れている時にはついうとうとしてしまうが、展開が遅いのでそれほど困ることがないのは助かる。とにかく早口で歌う、アップテンポで場面が変わっていく、昨今のトレンドとは真逆を歩むので、妻は付いていけずに離脱した。なんとなく納得できる。
とにかく主人公がホテルに誘うのが、水戸黄門の印籠のようで(いや由美かおるの入浴シーンか)毎回のお約束。いつ来るのか楽しみであるのだが、失礼を承知でいえば杉咲花のビジュアルで「いい女」を演じるのはきつい、見る側も入り込めないと思っていたが、どうしてどうして次第に「いい女」に見えてくるから女優さんの演技力は素晴らしい。
故郷の高校時代の彼氏と上京するだけの理由で別れたのに、東京に出てみればコロコロと男を変える主人公。第一話からコインランドリーで出会っただけの男の家に付いていってしまう無防備は、どのように育まれていったのか。次回で明らかになるそうで、恋愛ドラマで次回を待ちわびる気持ちになるのが久しぶり。わくわくしている。
五話まで描かれたわけだが、各回ごとに共感する部分はあったものの、昨日の最新回が最も腹落ちした。大学生の頃って、いや高校生くらいからか、女子の方がませていて、進路に関しても急ぎ足。男子は意外とゆったりしている。受験モードに入るのも女子の方が速かった記憶がある。総じて、男子はスローペース。恋愛も然り。ぐいぐい来るのは女子だったように思う。
自分がゆっくりだから、先を歩いている女子が社会への扉を先に開きそうで頼もしく、勇ましく、でも後ろを歩いている後ろめたさ、惨めさみたいなものを感じてしまい、リードされていたように思う。引け目を感じるから、自分よりたくましい女子が、他の男子に好かれるのではないかと不安になり、常におどおどしていたように思う。主人公の大学時代の元カレ、佃を演じた細田佳央太氏がそうで、両思いになって付き合っているのに、未来に対してネガティブで100%愛せていなかった。
今まで出てきた今彼、元カレの中で最も共感できたのは、高校大学時代の自分がそうだったからだ。当時の元カノは推進力がすさまじく、目標に向かってまっすぐに突き進める子だった。そのアグレッシブさに置いていかれ、イニシアチブは彼女が握っていた。夢は持っていたものの漠然としていたボクは、佃のようにやさしいけど、それ以外に取り柄がなく、今思えば元カノには物足りない人間だったと思う。そんな自分を嫌いになる時期もあったが、その頃はいろいろと迷っていた時期だったので、いたずらに否定しなくてもいいのかと思うようになるのに、元カノと別れてから随分と時間がかかった。
淡い思い出を蘇らせてくれる『冬のなんかさ、春のなんかね』。ドラマの間に流れる、エモーショナルに訴えかけてくる『金麦』のCMの世界観に近いものがあると気付いた。恋を匂わせるも決められた尺の中で物語は完結しない。受け取り方は視聴者に委ねられる。その仕組みは『冬なんか春なんか』とほぼ同じだ。既視感の謎が解けた。
恋にピュアだった主人公の倫理観がなぜ崩れたのか。後半で人格形成が明らかになる『冬のなんか春のなんか』。離脱者が多いらしいが、ボクは最後まで観られそうだ。
思いのままに。続けます。今日も呼吸ができた。ありがとう!
