XV. 悪魔

悪魔は
いつも恐ろしい姿で現れるわけではない。
甘い香り。
やさしい声。
こちらへ差し出される手。
欲しいと願うこと。
手放したくないと思うこと。
それ自体が
悪いのではない。
けれどいつしか
自分で選んだはずのものに縛られ
欲しかったはずのものから
離れられなくなることがある。
悪魔が差し出すのは
鎖そのものではなく
選び続ける理由なのかもしれない。
花の蔓は
結ぶことも
絡め取ることもできる。
けれど鍵は
すでにこちらの手の中にある。
欲望を消すのではなく
そこにあると気づき
自分の意志で見つめること。
悪魔は
心の奥にある願いを映している。
縛られていると気づくことは
ほどき始めるための
最初の一歩でもある。
