リアル「ミステリと言う勿れ」

【或るスナックの戯れ言】
ヒック、ヒック、ヒック…
身体をくの字に曲げて、コンクリートの上に横たわる男。さっきまで手にしていたのだろう、投げ出された携帯、ズボンのポケットから落ちた長財布…
それは昨年の年末、年の最後の営業を終えて
「今年もお疲れ様でした〜、寒い寒い」
店の鍵を閉めて、階段を降りた瞬間に目にした光景だった(私達の店は八軒ほどあるテナントの中の二階に位置している)
「キャッ」
手にしていたゴミ袋を落としそうになった。
相棒のミユは迎えに来ていた娘さんが待っていたので、先に行ってしまった後で私一人だった。
酔い過ぎて、この階段から転落したのだろうか?見知らぬ男が倒れていた。
暫く様子を見てから、とりあえず、トントン…肩の辺りをそっと叩いて
「大丈夫ですか?起きられます?」
「こんな所に寝てると風邪引きますよ」
何度か起こそうと試みた。
ヒクヒクしていた男は今度はスースーと規則正しい寝息を立てて深い眠りに入っていた。
困っている私に代行の運転手さんが迎えに来た。
「sanngoちゃん、早くして。これ逃すと今日帰れなくなっちゃうよ」
(年の瀬の代行運転が一番混んでる時間帯だった)
「で、でも…」
私は倒れている男を指差した。
「まだ二階のお店、他にもやってるし大丈夫だよ。誰か気付いてくれるから」
「そうかな〜?」
「うん、sanngoちゃんの責任じゃないし」
責任…責任の問題なの?
やがて、酔っ払いと思われる男が首を上げて起きようと動き出したのを確認してから、私は車に乗り込んだ。
「ねぇ、大丈夫だよね?」
「大丈夫ですよ。それに飲み過ぎた男も悪い」
そう言われればそうかもしれない。それに怪我もしていなさそうだったし、起きそうだったし。階段を二、三段踏み外しただけなのかも…
起こしたからと言って、自宅も知らないから送ってあげる事も出来ないし。警察に通報して連行してもらうくらいしか、出来る事はないし。
年末に後味は悪かったが、言い訳で頭の中をいっぱいにして、昨年は終わった。
それから私はインフルエンザで寝込んでしまって、そんな男のことなど全く忘れていた。
それが昨夜、今年最初の営業に行った時だった。
階段の下、くの字に曲がって寝ていた男のちょうど頭の辺り、ざらざらとした粗い目のコンクリートに茶色のシミが出来ていた。大きさは二十センチほどのだ円形…
血!?
で、でも、あの時
首を持ち上げた男は頭に怪我など負っていなかった。でも、これは血…
死!!
思い浮かんだ文字はひとつだけだった。
これだけ大量の血を頭から流したら…
あり得る!どうしよう(泣)
それでも仕事初めで営業はしなければならなかった。
浮かない顔をしている私にミユが言った。
「あぁ、アレね〜、水かけて洗い流してやろうかと思ったんだけどさ。そしたら、まるでうちの店が悪いみたいじゃない?」
「えっ?!それでいいの?」
「うん?どうして?」
「だ、だって…(泣)」
「ゲロは洗った方がいいでしょ?」
はい〜?!(やす子調)
了

こんな狭い田舎町でスナック街から死人が出たら
大騒ぎになってるよ
トホホ
どうやら私は、今年もミステリーとサスペンスしか考えていないらしい(苦笑)
でも、良かったぁ〜(泣)
さて、お天気悪いけど
お洗濯して来よう。
じゃぬーん♪
