十二月の朝 #シロクマ文芸部

十二月なのに、霧深い朝のことだった。
容赦なく降り続いた雨が、やっと終息を迎えた朝、自転車で巡回していた交番の橘巡査は、大きな銀杏の樹の下で倒れている男女を発見した。
既に事切れているのは一目瞭然だったが、霧の中、その二人は手を握りあい微笑みを浮かべているように見えた。
ーー心中?
すぐさま本部に電話を掛けると橘巡査は現場保持の為に遺体から少し離れた位置に陣取った。勤続五年を向かえるが、人口一万にも満たないこの田舎町で初めて自分で見つけた遺体だった。それも二人、二遺体…
ーーこれはチャンスかもしれない。
忘れていた出世欲が橘の中に湧いてきた。しかし犯罪の匂いはあまり感じられない。
ーーこのまま心中で決まりだな
そう思っていた矢先、男の方が
「う、ううう…」
声を漏らした。
「大丈夫ですか?」
橘が慌てて駆け寄ると頭を抱えて目を開けた男の口から僅かにアーモンド臭が漂っていた。
ーー青酸カリ自殺か?!男の方は致死量に達しずに生き残った?
「とりあえず救急車を」
そう言った橘を男は片手を上げて制した。
「いや、大丈夫だ」
「はっ?だって貴方、青酸カリを飲んだんでしょう?」
「ウム…飲まされたのかな?でも本当に大丈夫だから…」
男は、まだ痛むらしい頭を手で押さえながら、ゆっくりと上半身を起こすと、隣で息絶えている女に目をやった。
「香織ちゃん、死んじゃったのか…」
その表情からは、悲しむでもなく寂しがるでもなく、だからと言って冷たく突き放すのでもない、何と表現したらいいのか分からない無常なものが感じられた。男は小さな声で誰に言うでもないように呟いた。
「やばい、かっこよすぎる俺」
「は?はぁ〜?」
橘巡査は男の意図を理解出来ずに、思わず声を発した。
「だから〜、かっこよすぎるの、俺」
「ちょっと何言ってるのか、分からないんですけど?」
「これで三度目だ、太宰治のようだろ?」
「……」
どこがどう太宰治なのか理解出来なかったが、後に橘は供述調書に最初の男の一言は、
「やばい、かっこよすぎる俺」
だったと記した。
遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
了

講義のお時間です
はぁ〜い、これが「やばい、かっこよすぎる、俺」が流行語となった事件よ。
元社会部報道記者の三羽 烏さんが、この事件を取材して記事にしてくださったので、流行語大賞にノミネートされるまでになったの。
分かったかしら?
良い子の皆さんは絶対に真似しないでね♡
それではまた。
(って、今日までだから『ミリしら』)
小牧幸助さんの企画に参加させて頂きます。
実は、このお話「霧の朝」で書いてた使い回しなの(*´艸`*)

勢力的で暇だったのね(笑)
今年、このお話をまた書いたら出演者が変わっくるね(笑)

明日からは
いつきちゃんのアドベントカレンダー
にチャレンジするよ〜♡
ありがとう
さて、お風呂洗って来ようっと。
じゃぬーん♪
