東邦大東邦中の理科|10年分の入試問題から見る出題傾向と対策【学校別分析⑱】
1.はじめに
本レポートは、東邦大学付属東邦中学校の理科入試(2017〜2026年度)について、全273小問を「大単元・中単元・難度・出題形式」の4軸で分類したデータベースをもとに、出題の傾向と背後にある出題思想、そして具体的な学習指針までを一気通貫でまとめたものである。
東邦大東邦の理科は、大問7題・小問27問前後という構成が10年間ほぼ一定で維持されており、物理・化学・生物・地学の4分野をまんべんなく問う「総合力型」の入試である。ただし後述するように、その内実は単なる4分野の均等配分ではなく、地学(とりわけ天体)に明確な重心があり、かつ「知識を答える」よりも「その場で与えられた資料・実験・図表を読み、条件を整理して処理する」ことに配点の軸足が置かれている点に大きな特徴がある。
分析にあたっては、10年平均で全体像をつかんだうえで、必ず直近1〜2年(2025・2026年度)の動きを重ね合わせ、「いま何が起きているか」「これからどこへ向かうか」を重視して読み解いた。過去の平均像に引きずられて対策を組むと、直近の変化を取りこぼす危険があるためである。
■ 他の学校の理科分析はこちら
→ 【中学受験】学校別入試問題分析シリーズ 理科
2. 結論
先に結論を述べる。東邦大東邦の理科は、次の一文に集約できる。
「4分野を幅広くカバーしつつ、地学(天体)を軸に据え、与えられた資料・データをその場で読み取って条件を整理し、標準〜応用の設問を“取りこぼさず”処理できる受験生」を選ぶ入試。
■ 奇問はゼロ、勝負は「標準の完遂」 10年間で最難ランク(D)の出題は一問もない。全体の約7割が標準〜やや思考のB、約4分の1が条件整理・計算・考察で差がつくC。難問一発ではなく、標準問題をこぼさず、各大問の最後のCを拾えるかで合否が決まる。
■ 地学が全体の約36%、天体は10年連続出題 私立難関校としては地学の比重が際立って高い。とくに天体は10年すべてで出題され、単独最頻テーマ(44問)。暗記で片づく分野ではなく、図・位置関係の操作を要する分野に重心がある。
■ 知識より「読解」。資料読解+図表+グラフで約38% 知識問題(26%)と読解系(約38%)が主役。設問の多くは「その場の資料を読ませて考えさせる」タイプで、覚えているかより「読めるか・整理できるか」を問う。
■ 直近2年で記述・考察が定着 2025・2026年度は2年連続で記述・考察が出題(各4〜5問)。「読んで、整理して、自分の言葉で説明する」方向へ明確に進化しており、今後の対策の核になる。
3.この学校が理科で測ろうとしている力
データを単元の羅列として眺めるのではなく、「なぜこの構成なのか」を出題側の意図として読み解くと、東邦大東邦が測ろうとしている力は次の4つに整理できる。
① 4分野を穴なく仕上げてきたか(総合性)
大問7題は例年、物理・化学・生物・地学の4分野に配分され、10年間どの分野も欠けたことがない。化学が最少(約16%)でも毎年必ず出る。これは「得意分野で一発逆転」ではなく「全分野を最低ラインまで仕上げてきたか」を問う設計であり、苦手分野を1つでも放置した受験生をふるい落とす。
② 資料・データをその場で読み解く力(読解・条件整理)
出題形式で見ると、知識(26%)と読解系(資料読解26%+図表読解11%+グラフ読取1%=約38%)が二大主役で、読解系が知識を上回る。実験の手順・結果表・グラフ・地層図・天体の位置図などを提示し、「そこから何が言えるか」を問う設問が中心。事前知識だけでは届かず、初見の資料を読み、条件を並べ、必要な数値を取り出して計算・判断する力が要求される。これが東邦大東邦理科の“背骨”である。
③ 図・位置関係を頭の中で操作する力(空間・思考)
地学が全体の約36%を占め、なかでも天体は10年連続・44問と突出する。天体は暗記量が比較的少ない一方、月・太陽・星・地球の位置関係を三次元的に思い描き、時間変化を追う「操作」の分野である。ここに最大の比重を置くのは、「覚えた量」ではなく「頭の中で図を動かせるか」を測りたいという意思の表れと読める。力学(ばね・てこ・浮力・運動、37問)、電気回路(33問)も同じく“操作型”であり、常連である。
④ 読んだことを自分の言葉で説明する力(記述・考察)
2022年度に記述・考察が現れ、2025・2026年度は2年連続で定着した。単なる正誤ではなく「なぜそうなるか」「実験から何が言えるか」を書かせる方向で、③までの力を“言語化”できるかを最後に問う。近年の進化点であり、出題思想が「読む→整理する→説明する」へと一段深まっていることを示す。
4.大単元分析
10年間の大単元別小問数と割合、および直近の動きは以下のとおり。

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