駒場東邦中の理科|10年分の入試問題から見る出題傾向と対策【学校別分析⑤】
1 はじめに
本レポートは、駒場東邦中学校の理科入試(2017〜2026年度)について、全258小問を「大単元・中単元・難度・出題形式」の4軸で分類し、10年間の出題傾向とその背後にある出題思想、そして具体的な学習指針までを一気通貫でまとめたものである。
この学校の理科でもっとも際立つのは、物理と化学という2分野に、難度A(易しい)に相当する設問が10年間で一つも出題されていないという事実である。生物には9問、地学には10問のAが存在するのに対し、物理・化学はゼロ。この2分野では、もっとも簡単な設問でも標準(B)以上のレベルが要求されており、「まず易しい問題で得点を稼ぐ」という発想がそもそも成立しない。
その一方で、最上位の難度D(難問)は2017〜2022年度の6年間、一問も出題されていなかった。ところが2023年度に初めて2問出現して以降、2024・2025・2026年度も1〜2問ずつ続けて出題されている。しかもD相当の6問のうち5問が物理、1問が化学であり、生物・地学では10年間を通じて一度も出現していない。つまり、物理・化学という2分野は、「易しい問題がそもそもない」という骨格を保ったまま、直近4年で難度の上限がさらに一段引き上げられたことになる。
大単元は物理32.6%・地学25.2%・生物24.0%・化学18.2%で、物理がもっとも大きい。難度全体ではA7.4%・B40.3%・C50.0%・D2.3%で、Cが最大勢力を占める。大問構成にも特徴があり、大問1は10年間のうち9回、複数分野が入り混じる小問集になっている一方、大問2以降は単一分野でまとまっている。分析にあたっては、10年平均で全体の骨格を押さえたうえで、必ず直近1〜2年(2025・2026年度)の動きを重ね、「いま何が起きているか」「今後どこへ向かうか」を重視した。
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→ 【中学受験】学校別入試問題分析シリーズ 理科
2 結論
先に結論を述べる。駒場東邦中の理科は、次の一文に集約できる。
物理・化学の2分野には10年間、易しい設問(A)が一問も出題されない一方、2023年度以降は最難関の設問(D)が新たに登場し続けている、難度の下限が高く上限がさらに伸びている入試。大問1は9割の年度で複数分野が混在する小問集であり、大問2以降は単一分野でじっくり掘り下げる構成になっている。
■ 物理・化学は10年間、難度A(易しい設問)が一問も出題されていない 生物9問・地学10問のAが存在するのに対し、物理・化学はゼロ。この2分野では標準(B)が実質的な最低ラインになっている。
■ 難度D(難問)は2017〜2022年度はゼロ、2023年度以降は毎年出現 6年間出現しなかったDが、2023年度に2問登場して以降、2024・2025・2026年度も1〜2問ずつ続いている。物理・化学という、もともと易しい設問のなかった2分野に、直近でさらに難しい層が追加された形である。
■ D相当6問のうち5問が物理、1問が化学。生物・地学は10年間ゼロ 物理はC・D合わせて63.1%、化学は61.7%と、いずれも6割超が差のつく・難しい設問である。生物40.3%・地学43.1%と比べ、明確に重い。
■ 大問1は10年間で9回、複数分野が混在する小問集 1つの大問の中で物理・生物・地学・化学が入れ替わり登場する構成が定着しており、単一のテーマだけでなく理科全般への目配りが試される。
■ 化学は「水溶液・気体」が78.7%を占める、圧倒的な一極集中 化学47問のうち37問がこのテーマに属し、化学対策の大半をここに振り向ける価値がある。
3 この学校が理科で測ろうとしている力
データを単元の羅列としてではなく「なぜこの構成なのか」という出題側の意図として読むと、駒場東邦中が測ろうとしている力は次の4つに整理できる。
▍① 物理・化学には最初から標準以上を求め、易しい選抜を行わない
物理・化学にAが一問もないという事実は、この2分野において「知っていれば即答できる」設問をそもそも用意していないことを意味する。標準(B)からやや難(C)にかけての処理力を、理系2分野の合否ラインとして設定していると考えられる。
▍② 2023年度以降、物理・化学の難度上限をさらに引き上げている
D相当が2017〜2022年度は一切出題されなかったのに対し、2023年度以降は毎年のように出現している。しかもその出どころは一貫して物理・化学に限られる。理系2分野における選抜機能を、直近でさらに強化する方向に舵を切ったと見ることができる。
▍③ 大問1で理科全般への目配りを、大問2以降で1分野の深い理解を試す
大問1が9割の年度で複数分野の混在する小問集になっている一方、大問2以降は単一分野でまとまっている。試験の導入部分で理科全体への幅広い理解を確認し、後半で1つのテーマを掘り下げる思考力を試すという、二段構えの設計になっている。
▍④ 化学は水溶液・気体という王道に絞り、生物は植物を中心に据える
化学の78.7%が「水溶液・気体」というテーマに集中していることは、この学校が化学において幅広いテーマを網羅するよりも、王道のテーマを深く掘り下げる出題を志向していることを示している。生物も「植物」が48.4%を占め、特定テーマへの重点配分という方針は生物にも共通している。
4 大単元分析

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