早稲田実業中の理科|9年分の入試問題から見る出題傾向と対策【学校別分析㉕】
1 はじめに
本レポートは、早稲田実業学校中等部の理科入試(2018〜2026年度)について、全135小問を「大単元・中単元・難度・出題形式」の4軸で分類し、出題傾向とその背後にある出題思想、そして具体的な学習指針までを一気通貫でまとめたものである。
早稲田実業の理科で最も際立つ特徴は、大問3題構成で物理・化学・生物・地学の4分野の中から3分野だけを選んで出題する「3分野ローテーション型」であることだ。2019〜2026年度の8年間、毎年きっちり3つの大問が組まれ、残る1分野は出題されない。9年間で見ると、地学が2020・2022・2024年度と最も頻繁に不在(3回)になっており、物理は2019・2021年度、生物は2023・2025年度にそれぞれ2回不在になっている。化学だけは2018〜2025年度まで8年連続で出題され続けてきたが、2026年度に入って初めて不在となった。2018年度のみ、化学と生物が1つの大問に同居する変則的な4大問構成であり、2019年度以降に現在の3分野ローテーション型が確立したと考えられる。
この構成のため、総小問数も他校と比べて少なく、9年間平均で1年あたり15.0問にとどまる。しかも2018〜2021年度平均17.0問から2022〜2026年度平均13.4問へと、直近にかけてさらに絞り込まれている。1問あたりの配点や比重が相対的に大きくなりやすい入試構造と言える。
難度については、9年間・135問の中でD(最高難度)に該当する出題は一度もなく、A35.6%・B57.0%・C7.4%という構成である。標準的な処理力を土台にしつつ、Cの比率は2018〜2021年度平均5.9%から2022〜2026年度平均9.2%へとやや上昇している。ただし2026年度はC比率0%と、直近でも年度による振れが大きい。
さらに2026年度は、物理・生物・地学の3つの大問すべてが「熱中症・気候」という1つの時事テーマで貫かれるという、これまでにない構成が登場した。分析にあたっては、9年平均で全体像を押さえたうえで、必ず直近1〜2年(2025・2026年度)の動きを重ね、「いま何が起きているか」「今後どこへ向かうか」を重視した。
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2 結論
先に結論を述べる。早稲田実業の理科は、次の一文に集約できる。
物理・化学・生物・地学の4分野から3分野だけを選んで出題する「3分野ローテーション型」の入試。総小問数を絞り込みながら標準的な処理力を丁寧に問い、難度Dは一度も出題されない。2026年度には史上初めて化学が不在になると同時に、物理・生物・地学の3大問すべてが「熱中症・気候」という1つのテーマで貫かれる、これまでにない構成が登場した。
■ 大問3題・3分野ローテーション型、地学が最も不在になりやすく化学は2026年度に史上初の不在 2019〜2026年度は毎年3分野だけが選ばれる構成。地学は2020・2022・2024年度と3回不在になった一方、直近2年(2025・2026年度)は連続して出題されている。化学は2018〜2025年度まで8年連続皆勤だったが、2026年度に初めて不在となった。
■ 難度Dは9年間ゼロ、Cは7.4%。直近はC比率がやや上昇も2026年度は0%に 9年間の難度構成はA35.6%・B57.0%・C7.4%・D0%。C比率は2018〜2021年度平均5.9%から2022〜2026年度平均9.2%へ上昇したが、2024年度16.7%・2025年度15.4%に対し2026年度は0%と振れが大きい。
■ 総小問数は9年間で減少傾向、1年あたり平均15.0問というコンパクトな構成 2018〜2021年度平均17.0問から2022〜2026年度平均13.4問へ縮小している。他校と比べて設問数が少なく、1問あたりの重みが相対的に大きい入試である。
■ 全分野で「選択」が最頻出形式、分野ごとの二番手には明確な違い 選択は物理41.2%・化学47.4%・生物43.3%・地学48.5%といずれの分野でも最頻出。二番手は化学が計算(28.9%)、生物が記述(30.0%)、地学が記述・読み取り(各21.2%)、物理が計算(23.5%)とはっきり分かれる。
■ 2026年度、物理・生物・地学の3大問が「熱中症・気候」という1つのテーマで統一 物理(エアコンと熱交換・暑さ指数・熱中症)、生物(体温調節・血液循環・熱中症)、地学(気象観測・気候変動・都市気候)と、独立した3つの大問が同一の時事テーマでつながる、9年間で初めての構成だった。
3 この学校が理科で測ろうとしている力
データを単元の羅列としてではなく「なぜこの構成なのか」という出題側の意図として読むと、早稲田実業が測ろうとしている力は次の4つに整理できる。
▍① 4分野から3分野を選ぶ「ローテーション型」で、狙い撃ちを許さない
2019〜2026年度は毎年、物理・化学・生物・地学の4分野から3分野だけが選ばれて出題される。どの分野が外れるかは年度によって異なり、地学は3回、物理・生物は2回ずつ不在になった一方、化学は2025年度まで8年連続で出題され続けた。「今年はどの分野が出ないか」を的中させることは容易ではなく、結果として4分野すべてを本気で仕上げておく以外に安全な戦略がない構成になっている。
▍② 設問数を絞り込み、1問あたりの重みを高める設計
総小問数は9年間平均15.0問と、他校と比べて明確に少ない。しかも2018〜2021年度平均17.0問から2022〜2026年度平均13.4問へとさらに絞り込まれている。設問を厳選することで、1問あたりの配点や重みが相対的に大きくなりやすく、取りこぼしが致命的になりやすい構成と言える。難問を大量に並べるのではなく、少数の設問で確実に理解度を測ろうとする姿勢がうかがえる。
▍③ 「選択」を土台に、分野ごとに異なる二番手の力を試す
物理・化学・生物・地学のいずれの分野でも「選択」が最頻出形式(41〜49%)であり、まず選択肢を正しく判断する力が全分野共通の土台になっている。そのうえで、化学は計算(28.9%)、生物は記述(30.0%)、地学は記述と資料読み取り(各21.2%)、物理は計算(23.5%)と、二番手に来る力が分野ごとに異なる。共通の土台の上に、分野固有の応用力を積み増す二層構造の出題設計である。
▍④ 時事的なテーマを理科の切り口で束ねる、教科を超えた統合への志向
2018年度の「発電・エネルギー資源」、2020年度の「プラスチックと環境」、2026年度の「熱中症・気候変動」など、社会的な関心が高いテーマが繰り返し取り上げられている。特に2026年度は、物理・生物・地学という独立した3つの大問すべてが「熱中症」という1つのテーマで貫かれており、単元知識を超えて、複数分野の知識を1つの現実的なテーマに結びつける力を試そうとする姿勢が明確になっている。
4 大単元分析

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