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老後の不安と過ぎていく平凡な毎日|今を生きるためのiDeCo

人は誰でも若い頃は「今を生きる」といった安易なことを言うが、人生の長さを俯瞰的な視点で考えると「余命5年」の場合と「余命60年以上」の場合では、「今を生きる」の生き方がだいぶ違ったものになる。

「余命5年」というのは、例えばがんに罹ってしまった時に、過去の症例と自分の症状を比較して医療者が推測した年数で、「余命60年以上」というのは通常通りに人生を全うできる場合の年数だ。60年以上生きる想定である時に、普通は「余命」という言葉は使わないが、例として書いている。

余命5年だったとしたら「なんてことだ」といったショックを感じ、その運命に抗う人もいれば、それを受け容れて残りの5年を後悔なく生きるという人もいるだろう。家族との時間を大切にしたり、世界中を旅したり、やりたいと考えていたことを次々と実行していくようになるはずだ。

しかし、残りの人生が60年以上あると思い込んでしまった時は、こういった人生における切迫感を感じることができず、だらだらと日々を過ごしてしまう。しかし時間は無情にも過ぎていき、後悔ばかり残る人生になってしまう。

死に直面した人間の行動は美しくて行動力に溢れている。一方で、健康で問題なく生きている人には、その美しさや行動力が足りない。

だから余命が短い人の闘病ストーリーは、様々なかたちでドラマや映画になり多くの人の心を動かしている。生き方は普遍のテーマであり、闘病ストーリーは鉄板のツールなのだ。

だけど、素直な気持ちを持っている人なら誰だって、長生きがしたいと思っているはずだ。死ぬことは怖いし、人生でやりたいこともたくさんある。

しかし、今の様に豊かで、戦争も貧困もない日本の社会では、病気の様な天命が下ることがなければ、大抵はみんな何十年も生きる想定で人生を過ごしている。誰もが老後の不安ばかり口にしているのがその証拠だ。

つまり、余命5年の人は「今を生きる」ことができていてもその期間が短く、余命が長い人は「今を生きる」ことができる時間があるにも関わらず、そのチャンスを見過ごしているのだ。

これではせっかく長生きできても後悔ばかり残ってしまう。だから、長生きを目指しながらも、しっかりと今を大切に生きられるようにしなければならない。当たり前のことを言っているが、それがなかなかできないのだ。

長生きを想定しながら今を大切に生きるには、老後の楽しみを見出したり、時間を掛けなければ見出せない楽しみを作ることが必要になると思う。

あり余る時間を旅行や読書に充てたり、今までの苦難の人生を身内と語りあったり、そういった当たり前のことができる幸せを想像できなければいけない。そのためには年金や貯蓄がなければならないし、還暦を過ぎても目先のお金に困ってしまうと、そういった時間も余裕を持って過ごせない。

老後の不安がチラついた状態で、今を楽しく生きることは難しい。その不安がなければ、老後も楽しみにしながら、今を後悔なく生きることもできるようになる。だから、未来と今の二つの時間軸を考えつつ、計算しながら楽しく生きていく必要があるのだ。

じゃあそれはどうすればいいのか。僕が思うに、会社員だったらiDeCoをやるのが一番良い。はじめの設定だけ済ませれば、毎月自動で引き落とされて、経済の発展と共に老後の資金が豊かになっていく。更には目先の減税効果も強いので、今を生きることにも貢献してくれる。

会社員の場合はiDeCoを毎月の上限である23,000円を投資することができる。リスクの少ない最も合理的な投資先である全世界株式に投資するとして、60歳を過ぎればそのリターンは2,000万円を余裕で超えるだろう。

これによって、老後の不安は楽しみに変わる。老後が不安でなければ、今を生きる姿勢も変わる。別に余命数年のような切迫感がなくたって、不安さえ抱かなければ人生はチャレンジングで刺激的なものになるはずだ。

要するに何が言いたいかと言うと、長生きすることや老後の不安を解消することを、保守的な考えだと捉えない方がいいということだ。未来の不安を抱えながら積極的に今を生きれるほど、人は強くないのである。

僕は20代前半に胃がんに罹って死にかけたことがある。手術後の5年間は再発率が50%前後で「今を生きる」思考しかできなかったので、それこそできる限り遊んで過ごしてみたが、どうしても再発が頭をよぎってしまい、どこか虚しさが残って今を生ききれてはいなかった。

そして、再発することなく5年が経過したとたんに、60年くらいの未来が目の前にパーッと開けたのである。

そうなると、今度は考えが保守的になり、そもそも今を生きることをおろそかにするようになった。いつ死ぬかわからない経験をしたにも関わらず、生きているかどうかわからない老後の不安を考えて、今を生きていないのである。

だから、今を不安なく、そして長く生き続けるためにiDeCoを始めてみたのだ。せっかく積み立てているのだから、それを使わないのはもったいない。そう考えると何が何でも長生きしてやろうと思って、今を必死に生きることにも繋がる。

老後のためのiDeCoではなく、今を生きるためのiDeCoとして積み立てている。

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