執着が生んだ名曲|『Don't Worry Baby』
個人的に物凄く好きな曲があるので、ここに紹介する。The Beach Boysの『Don't Worry Baby』。これは本当にいい曲だ。
まるで聖歌隊の様に美しくて分厚いコーラスは絶え間なく続き、その合間を縫うようにブライアン・ウィルソンの裏声が響き渡る。個人的にはシンプルなドラムのリズムが癖になる。
実はこの曲には、インスピレーションを与えた別の曲がある。音楽も文学も、過去から未来へとつながる系譜があり、どんなに独創的な作品であっても、完全にゼロから生まれることはほとんどない。
それはThe Ronettesの『Be My Baby』という曲で、『Don't Worry Baby』はこの曲へのアンサーソングとしてブライアン・ウィルソンが書いたものだ。
ブライアン・ウィルソンは『Be My Baby』に執着するほど惚れ込み、何度も何度も聞くようになって遂にはアンサーソングまで作ってしまったのである。
執着や偏愛とは、ある種のめんどくささが伴うものだが、こうやって芸術に昇華するパターンもあるようだ。
もし当時SNSがあったら、ブライアン・ウィルソンは『Be My Baby』の感想を毎日投稿していたに違いないし、「今日も最高のイントロに出会えた。」「ロニー・スペクターの声は神!」みたいなツイートがタイムラインを埋め尽くしたかもしれない。めんどくさそうだ。
ちなみにブライアン・ウィルソンは『Be My Baby』を何千回も聞いたらしい。まさかの何千回。昔はレコードの売上枚数がカウントされて評価指標になっていたが、現代は再生回数が指標になっている。だから彼の再生だけで『Be My Baby』の評価はぐっと高まっただろう。
でも、そうやって音楽に取り憑かれるくらいの情熱があったからこそ、『Don't Worry Baby』のような名曲が生まれたのだ。
芸術というのは、そのくらいの執着が必要なのだろう。それだけのめり込めるというのは、幸せなことだと思う。
