歴史を勉強したら何の役に立つのか
『国家はなぜ衰退するのか』を読んでおり、久しぶりに歴史を勉強していた時に感じる知的興奮を堪能している。
歴史を勉強したところで来月の給料が上がるわけでもなく、恋人ができたり友達が増えたりするわけでもない。「歴史に学ぶ」と言うけれども、歴史を勉強するわかりやすいインセンティブは少ない。
だが、やはり久しぶりに歴史を勉強していて、色々と学びになることがあった。長大な世界中の歴史に思いを馳せて、当時何が起こって人々がどう動いたのかを知ることで、今の自分が何をすればどうなるのかを深く考えることに繋がる。
本書はタイトルの通り、衰退する国家の傾向を分析している。本書の主張は一貫しており、衰退する国家の要因は政治制度にあるというものだ。
例えばラテンアメリカやアフリカ諸国の様に貧困問題が蔓延している国は、歴史を辿ると収奪的な制度が政治に組み込まれており、国民が働いたり発明をしたりすることへのインセンティブが得られない。働いて金を稼いでも国家に収奪されてしまう、それを知りながら頑張れる人間はいないわけだ。
この視点を持って現代に至るまでの人類の歴史を丁寧に辿っていくのが、本書の面白いところで、下巻では明治維新という革命を起こす日本も出てくる。絶対主義的な制度が続いてしまった中国と対比して描かれているのが面白い。
さて、これらの視点を学んだことで、それを自分の生活にどう活かすかを考えるのが難しい。僕の様な影響力のない独身の中年男性には明治維新の様な革命を起こす力はないし、会社員として忙しく現代を生きていくのに精いっぱいな状態で、人類の発展と衰退の歴史を学んでどうすればいいのだろうか。
もちろん、本書からは制度の枠組みのなかで人がどう動くものなのか、それをよく学ぶことができる。インセンティブがない状態で人は活力を見出せないとしたら、自分が所属する組織が繁栄するかどうかを見極めるうえで役に立つだろう。
また、人類史レベルの壮大なスケールで歴史を学んでいると、現代の日本社会というのは、世界史のなかで見ると極めて裕福で恵まれた環境であることもわかる。世界の大半のエリアでは、絶対主義のもと収奪的な政治制度が敷かれており現代もその影響で貧困に喘いでいるのだ。西欧や日本はその状況を打破できた数少ない国に過ぎない。
そんな環境にいるにもかかわらず、日本の未来を語る時の国民の雰囲気は非常に暗い。自分の環境を嘆き、物価高やコメ価格の上昇に喘ぎ、政府の悪口を言い、全ての元凶は誰かの仕業であると陰謀論に傾いていく。
歴史を学ぶことによって、こういった思考から脱却することができる。そもそも現代の日本は決して嘆く様な環境ではないし、仮に嘆くべきだとしても、歴史上の分岐点ではそういった環境は人々が自ら打破して国を変えていっている。
嘆いているだけでは、その環境に身を置いて時間が過ぎていくだけで人生は終わってしまう。現代のその状況で何をするか、どんなチャンスが転がっているか、それを冷静に考えることができるのだから、やっぱり歴史を勉強することはとても重要な意義があると思う。
