札幌余市ひとり旅|深夜1時に夜パフェを食らう
すすきの、という駅につくと、
獣の匂いがした。
もしや、と地上へ出る階段を登り、ホテルに向かう。やっぱり「ジンギスカン」の看板がやたら目につく。
外に出ると急に肌寒い。あわててもってきたカーディガンを羽織ると、北海道に来たと実感する。

酔っ払いのけたたましい笑い声。
夜でも明るすぎるくらいのネオン街。
独りでもさびしくなりようがないほど、騒がしい。そしてとんでもなく自由な空気がする。
なにしよう、なに食べよう。
そのまま野垂れ死にそうなくらいの自由な夜を感じていた。
ニッカウヰスキー蒸留所|余市
余市へは、朝ドラ「まっさん」で有名なウイスキー蒸留所を訪れた。
蒸留所見学もできるけと、当日だとさすがに満席。無料のミュージアムがあったので、そこを見学することに。


ミュージアムの中にはウイスキーが少量で試飲ができるBarが併設されている。

選ばれたウイスキーと
昔からあるアップルワインを試飲



10ml 10,000円の凄そうなウイスキーもあった
当時は50日以上かかったというスコットランドへの留学のために命懸けの旅ののちに、留学から20年かけてウイスキーが生まれる。
竹鶴政孝(マッサン)の人生年表を見ていると、直感を信じるまっすぐな強さ、それを実行する自身への誠実さが突き刺さる。
その果てしなく長い道のりと孤独を思うと、
切なくも胸が熱くなった。
一人旅なのをいいことに、
ミュージアムはゆっくりと2周した。
新たな発見をしては、ひとつ、ふたつ前の展示に戻るを繰り返していた。油断すると、涙が滲む。
ミュージアムでは、マッサンをいろんな角度から見ることができた。過去の偉人というより、昔、たしかに生きて、実際に話したり、書いたりしたんだなと思った。



よく通る声
展示や美術館に誰かと行くと、ついペースを合わせてしまう。そのとき抱いた感情に向き合いたくても、自然とブレーキがかかり、せかせかしてしまう。
でも今回はひとり。
ブレーキをぶっこわし、脳内感情ジェットコースターのまま、情緒たっぷりに展示を楽しんだ。
ひとり旅の良さは、感情にブレーキをかけなくていいことだ。
マッサンのウイスキーへの情熱を胸に残しつつ、次の目的地へ向かった。
うに丼|余市
北海道でしかできないことの一つに、
本物かつ至高のうに体験、というものがある。
向かったのは余市駅すぐ近くの柿崎商店。
金額は時価というやつで、
ウニ丼にいくら醤油漬けを乗せて5100円。

まずは一口、舌に乗せると、
海は通り越して、宇宙が広がった。

海が脳天まで突き抜けて、溺れたときに肺いっぱいにしょっぱすぎる海水が入り込んだのを思い出す。
けど、さらに宇宙なのだ。
ぬるりと甘く、官能的で、
それはまるで知りたくなかった大人の世界。
あぁ気持ち悪い。でもあと少しだけ。
ざらりと甘い、海のクリーム。
ウニを食べれるというのは、ある種才能だと思う。小さいときのわたしが食べたら間違いなく泣き出すだろう。
いくらもイカもマグロも、海鮮はシャケほぐしのごはんに乗せて食べる瓶詰め以外、すべて苦手だった。
海鮮というものは、なんというか生命を感じ過ぎて、気味が悪いと思っていた。
いくらなどの魚卵は、それがわかりやすい。
ぷちっと命がはじけて、海の味が口に広がる。
ウニはもっと生々しくて、生命の内臓というか。調べてみるとウニの可食部は卵巣や精巣らしい。どんぴしゃ、生命のかたまりではないか。
ごちそうさまでした。
六花亭|小樽
北海道に行ったら、絶対に立ち寄りたかった六花亭。小樽運河も一目見ておきたかったので、小樽の店舗へ向かう。


小樽店舗は1階が売り場で2階にイートインスペースがある。2階では店舗限定の生菓子や購入したお菓子を食べることができて、コーヒーは一度買うとおかわり無料。生クリームを入れることができるのが六花亭らしくて好き。

六花亭、いいよね。
ルタオもロイズも白い恋人も好きだけど、六花亭が一番好きだと言って欲しい。
六花亭には北海道帯広に沿った世界観がある。
パッケージにも、お菓子にも、ひとつひとつ物語とメッセージ性、そして故郷への愛が溢れて、一介の菓子にしては不相応なほどヘビー級である。
菓子界隈のメンヘラ。というと失礼か。

できたてのチーズケーキがチョコクッキーに挟まれている
定番な味なのに、なんでこんなに美味しいんだろう



ホワイトチョコの薄膜でいちごジュレを包んだもの
最高に繊細なので店舗じゃないと買えない
超うまいのでぜひたべてみてほしい

夜ごはんはラーメン。
友人がすすめてくれた「みその」に行く。
わたしの地元、味噌の国、名古屋には、味噌ラーメンを名物としていない。おなじ味噌を愛する民なのに、この違いはなんだろう。
うらめしく思いながら、あたたかなラーメンをすする。うまい。


いったん札幌のホテルに帰り、
深夜まで休む。
夜パフェと24営業のおにぎり|札幌
深夜0時30分。ホテルから繁華街に向かって歩き出す。札幌のひんやりした風が心地よくて、こんな時間にふらふらとしてることが嬉しい。
夜独特の甘美な自由を味わうと、今のわたしは無敵かもしれないと気分が高揚する。
目的は夜パフェ発祥の地、「夜パフェ専門店 Parfaiteria PaL」。
場所はネオンきらめく繁華街、
すすきののど真ん中。
めちゃくちゃ待つという前評判のもと、
すっぴんメガネという出立ちで、閉店1時間前着を狙った。
1時に着くと、3組並んでいた。
さすがにこの時間に、この場所。
酔ってやたら大きい声を響かせるヘソ出しYK2ファッションの若者たち、クスクスクス…とやたら肩を寄せ合うほろ酔いの始まりそうなカップル。それぞれがつけた香水のにおいが混ざり合って、鼻をくすぐる。
めちゃくちゃ場違いな自分にもはや乾いた笑いである。アウェイってやつ。
旅の恥はかきすてだ。
もういーもんね、と独りって無敵だと再び思う。




うさぎのビジュが最高

不思議だ。
美しく凝ったパフェは、最初の一口こそが至高だと思う。新しい味や食感がどんどん出てきて楽しい。なのに食べ進めるごとに、
次に食べるおにぎりのことばかり考えてしまう。
口の中がどんどん甘く、ベタついていく。
おにぎり、なんの味にしよう。
昨日はサーモンいくらにしたから、
今日はクリームチーズおかかかな。
パフェで舌も鼻も耳も目もふさがっていく気配がする。
昨夜も訪れたおにぎり屋「にぎりめし」は、少し混んでいた。酔った人しかいないから、どこにどう並んでるのか、よくわからない。



ぼうっと周りを見渡すと、個性溢れる人ばかりだ。それぞれで短編が書けそうな具合だ。
ショートヘアの金髪にメガネをした女の子と男の子2人。1人でモツ煮を注文する仕事上がりの女性。全身真っ黒で黒いベレー帽を被った男性。
夜はどんな人にも似合う。
どんな人も包み込む安心感がある。
日中歩けない人も、夜中は歩きたくなる。繁華街の夜は気だるさと冷たいあたたかさに満ちている。
「太陽の下を堂々と歩け」
みたいな言葉があるからこそ、
夜は月に甘やかしてほしい。
おにぎりを頬張りながら、
ホテルへの道を足取り軽く帰る。
頬にあたる夜風はやさしい。
深夜2時のすすきの。
自由は、夜にこっそりと現れる。
***
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