夏のはじまりはわたしの終わり
夜風に乗って肌に纏わりつく湿気がわたしの気持ちを掻き立てる。
もう夏がすぐそこに来ている。
新しく買ったサンダルは歩きやすくなった代わりにヒールの高さが低くなった。
ノースリーブで歩いてた去年と違い今年はカーディガンを羽織っている。
歳をとっても夏がすぐそこにいるこの季節はソワソワする。
みんなで海までドライブをして花火をした夏。
缶酎ハイ片手に徘徊した地元の公園。
酔っ払い2人で手を繋いで少し遠いコカ・コーラの自販機まで歩いた夜。
肌で感じる思い出たちが胸を締め付ける。
思い出して泣きたくなるのは、そんな日々はもう縁遠くなるからだ。
大きくなったお腹をひと撫でする。
一生続くと思っていただらだらとした青春の延長線上のような日々はあっけなく終わってしまった。
もう友達と夜中ドライブすることもないだろう。
空と海の境目がわからない暗い空間で聞く大きな波音も聞かなくなるだろう。
それはとても淋しいけれど、いつまでもそんなことしているわけにはいかないからこれでよかったんだと自分に言い聞かせる。
想定外の妊娠、結婚だったけれど先行き不安な未来にレールが轢かれて生きやすくなった。
これからはお腹の子と夫の為に生きるんだ。
好き勝手生きてきた代償は未来が見えなかったことだった。
結婚、出産が全てではないけれど、仕事にも趣味にも生きれなかったわたしには必要なことだった。
ただないものねだりで、あの仕事してみたかったとか、あれやってみたかったと考えてしまう。
人生なんてそんなもの。
だけどふらふらと目的なく生きてきたけれど夏の始まりを告げるような夜に懐かしくなる思い出はたくさん持っている。
思い出だけで生きていけるくらいには遊んだ。
今までのわたしは夏の始まりと共に終わる。
夏が始まったらわたしの人生は母親編に突入する。
