あの頃の音楽は大人になった今でも自分を救ってくれる
10代の頃によく聴いていた音楽たちを、最近また聴くようになった。
きっかけは二つある。ひとつは、the pillowsというバンドの解散。もうひとつは、漫画『ふつうの軽音部』との出会いだ。
私は中学生の終わりから大学時代にかけて、バンドにどっぷりと傾倒していた。
まずBUMP OF CHICKENにハマり、そこから日本の90〜00年代のロックバンドを聴き漁るようになった。私が生まれ育った町は、映画『リリィシュシュのすべて』のような、田んぼと畑ばかりの、何も無い田舎だった。音楽と恋愛だけが唯一の楽しみだった。
意外と田舎の子の方が経験が早いのは、他に娯楽がないからだと思う。私の勝手な推測だけど。
高校まではバスで片道50分。その間、銀杏BOYZやNUMBER GIRL、スーパーカー、椎名林檎、ミッシェルガンエレファント…沢山の音楽を聴いて過ごした。
つまらない田舎の風景も、音楽が流れると映画のワンシーンのようになることを知ったのはこの頃だった。
当時の交際相手は軽音部で、良い音楽や映画、漫画をたくさん教えてくれた。私は軽音部ではなかったけれど、ライブには行っていて、なんとなく親しみがあった。
別々の大学に行っても付き合いは続いた。大学時代になると、バイトでお金も増えて以前よりもっとCDを買ったり借りたりした。iPodを手に入れて、「好きな音楽リストの中からシャッフルで聞ける」という衝撃的な仕様に心が躍った。
時間なんて死ぬほどあるので、色々なライブにもよく行った。
彼とは4年ほど一緒にいたけど、大学3年の時に別れた。
別れても音楽好きはそのままで。
社会人になっても、初めのうちは仕事帰りに向井秀徳やZAZEN BOYS、ミツメのライブにひとりで行ったり、仕事仲間とフェスに行ったしていた。
でも、いつの間にか、私は大好きだった音楽を聴かなくなっていた。
何故なのか、当時はよく分からなかった。
忙しかったといえばそうかもしれない。でも、まだ独身だったし、家に帰れば時間はあったはずだ。通勤時間だってあったのに。
昔と違ってスマホでも手軽に聴けるようになってきたのに。
気が付いたら聴かなくなっていた。
きっと、社会人になった自分の気分と、青春時代に聴いていた音楽の空気や雰囲気が合わなくなっていったのだと思う。
かといって、今の気持ちにフィットする新しい音楽を開拓する気も、湧かなかった。
ありがたいことに、社会人生活は想像していたよりも人に恵まれて、楽しかった。
仲良くなった同僚や、当時付き合っていた夫は流行りのJ-POPが好きで、バンドには興味がなかった。カラオケでマイナーな曲を歌っても微妙な空気になるので、歌わなくなった。
職場の飲み会の三次会で行くカラオケでは、幅広い年代が知っている歌を歌う方が良いのだということも分かり、J-POPを歌えるように心がけた。
こうして、昔大好きだった音楽から少しずつ遠ざかっていった。
27歳で出産し、子育てが始まり、代わりに覚えたのは幼児番組の歌だった。
よく、「音楽は幸せな奴が聴くもんじゃない」とか、「孤独や失恋から良い音楽は生まれる」なんて言うけれど、これはある意味その通りだと思う。
私は幸せになったのだ。だから、音楽が必要なくなってしまった。
モヤモヤも、焦燥感も、孤独も感じない。もう自分の気持ちを重ねて、「これは自分のための歌かもしれない」なんて青い思いをする必要がなくなってしまったのかもしれない。
2019年、子育て真っ只中に大好きだったナンバガが再結成し、とても嬉しくてライブにも行ったが、結局、一度きりだった。
その後コロナが来て、ナンバガに限らずライブは次々となくなった。歓声のない、声を出せないライブなんてつまらないだろうなと思って、行かなかった。そのまま、再び解散してしまった。
二児の母となり、仕事と育児に追われる日々。音楽よりも、自己啓発のYouTubeを流すようになっていたある日。
the pillowsというバンドが解散したということを、Xで2週間遅れくらいで知った。
高校時代の彼が教えてくれたバンドで、一緒に沢山聴いた。
この解散が、なんだか悲しかった。彼らはずっと細く長く続けているイメージだったので、まさか解散するなんて思っていなかった。そのニュースをリアルタイムで知れないほど音楽から離れてしまった今の自分にも、少し寂しい思いがした。
久々に聴いてみたら、やっぱり良い音楽は何年経っても良かった。特に『LAST DINOSAUR』『FunnyBunny』という歌が好きで、今年になってから初めて『フリクリ』というアニメを観た。すごく面白かった。(これはまた改めて書きたい。)
そこからなんとなく、昔聴いていた曲を聴くようになった。
ある時YouTubeのコメント欄で『ふつうの軽音部』という漫画を知った。ジャンプ+で読めると知り、読み始めると、面白くて一気に読んでしまった。
主人公の好きな音楽が私と同じで親近感を感じたり。
軽音部に所属していなかった私にとってもどこか懐かしくて。「ああ、こんな高校生活を送ってみたかったな」と思わせてくれる。映画『リンダリンダリンダ』も彷彿とさせる。

作中にも色々な名曲が登場する。知っている曲が出てくると「どこかの誰かもこの歌が好きなんだな」と嬉しくなる。漫画の影響でもっと広まれば良いなと思う。
作品に出てくるandymoriも十数年ぶりに聴いた。当時、実はそこまでハマらなかったのに、今聴くとメロディも詩もとても良くて。
最近『16』という曲を毎日のように聴いている。
あの頃より、少し大人になったのだと感じる。
当時理解出来なかった歌詞の意味が、今はしみる。
私の通勤時間はちょっとだけ豊かになった。
仕事に行きたくない朝も、音楽を聴いていると職場へ向かえる。自然と足が動く。通勤時間に私をどこか遠い世界へ連れていってくれる。
憂鬱な月曜日は自分の席に着くギリギリまで聴いて。
自分の気持ちを乗せることは少なくなったけれど、ふとした歌詞が刺さったりする。
名曲は今も流れてるよ
目の前と向き合うとそれさえも色褪せていくと思ったら、負け
良い音楽は今でも変わらずそこにあって、また私を救ってくれているのだと思う。名曲は今も流れている。
小2の娘も音楽が好きなようで、時々流していると、好きになってくれるものもある。なかなか良いセンスをしていると思う。娘も自分の心に刺さる素敵な音楽を見つけてくれたら嬉しいなと思っている。
